やたぞう

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やたぞうさんの日記

(Web全体に公開)

2014年
08月20日
00:36

【鍵の4】ヨセコウと絶対計算


(4)ヨセコウと絶対計算

前回 http://goxi.jp/diary/200116 は、コウにまつわる絶対計算の考え方について説明しました。今回はこれを踏まえて、ヨセコウを絶対計算で考えたときに、1手の価値と各局面の地の大きさをどのように捉えられるかを説明していきたいと思います。

まず、通常のコウ、つまり本コウにおける絶対計算の考え方についてもう一度図で確認してみましょう。前回は半コウでしたが、今回は少し大きめの図を使います。

[J]から[M]の図をご覧ください。

[J]
★┬●┬●┬●○
├┼┼●●●●○
●┼●○○○○○
●●●┼┼┼┼┼ アゲハマ ●0○5

[K]
┌○●┬●┬●○
○○○●●●●○
●○●○○○○○
●●●┼┼┼┼┼ アゲハマ ●0○0

[L]
┌○┬○●┬●○
○○○●●●●○
●○●○○○○○
●●●┼┼┼┼┼ アゲハマ ●1○0

[M]
┌○┬○┬☆┬○
○○○┼┼┼┼○
●○●○○○○○
●●●┼┼┼┼┼ アゲハマ ●7○0

[J]は本コウを黒が解消した図、[M]は本コウを白が解消した図です。アゲハマの数を考慮すると[J]は黒地12目、[M]は白地15目となり、両者は27目差です。そして本コウは[J]から[M]までの図を、1手ずつの着手で相互に移行します。ただし[J]と[M]はコウを打ち切っていますから、それぞれが終点になります。

[J]と[M]の間には3手分の距離がありますので、全体の目数差を3で割って、このコウにおける1手の価値を9目と計算することができます。また、1手かけることで9目ずつ地の大きさが変わるので、[K]は黒地3目、[L]は白地6目となります。

◎この図はどうでしょう?
┌○●┬●┬●○
○○○●●●●○
├○●○○○○○
●●●┼┼┼┼┼ アゲハマ ●0○0

さてここで、上の図をご覧ください。[K]の図に似ていますが、ちょっと違いますね。そう、白のダメが一つ空いています。黒はこのダメを詰めて、さらにコウに勝たないといけない形、つまり黒の不利な一手ヨセコウの形になっています。

このヨセコウを白が勝つには、コウに勝って黒石を打ち上げればいいのですが、不利な側の黒は違います。このダメを詰めることを目標にしないといけないのです。言い換えれば、黒は一手ヨセコウを「解消する」ことで、新たに本コウを発生させなければいけないのです。

つまり、一手ヨセコウにおける目標(終点)は、以下のように整理できます。

黒……コウを取った状態でダメを詰めて、本コウを発生させる。
白……コウに勝って黒石を打ち上げる。

さあ、ここからどう考えればいいのでしょうか。ではこれまでと同じように、終点間の移行図を並べていきましょう。

[N]
┌○●┬●┬●○
○○○●●●●○
★○●○○○○○
●●●┼┼┼┼┼ アゲハマ ●0○0

[O]
┌○●┬●┬●○
○○○●●●●○
├○●○○○○○
●●●┼┼┼┼┼ アゲハマ ●0○0

[P]
┌○┬○●┬●○
○○○●●●●○
├○●○○○○○
●●●┼┼┼┼┼ アゲハマ ●1○0

[Q]
┌○┬○┬☆┬○
○○○┼┼┼┼○
├○●○○○○○
●●●┼┼┼┼┼ アゲハマ ●7○0

[N]は一手ヨセコウを黒が解消した図(本コウを発生させた図)、[Q]は白が一手ヨセコウを解消した図です。[Q]は白地15目ですが、[N]は何目の地でしょう?

ここで本コウの図に目を移してみましょう。実は、[N]は[K]と同じ図です。そして[K]は絶対計算で考えると、「黒地3目」でしたね。

すなわちこの一手ヨセコウは「黒地3目」と「白地15目」の間を3手セットで移行していると考えることができるのです。

さらにこの一手ヨセコウの「1手の価値」は、終点間の目数差である18目を3で割って6目と計算することができます。したがって[O]は白地3目、[P]は白地9目となります。

以上で、一手ヨセコウの1手の価値と、各局面の地の大きさを決めることができました。

上の例では本コウの1手の価値が9目、一手ヨセコウの1手の価値が6目になりましたが、このことは、一手ヨセコウを本コウにした場合に1手の価値が1.5倍になることを示しています。逆に言えば、一手ヨセコウにおける1手の価値は、本コウの2/3になるのです(ただし、コウをヨセた際に全体の目数差が変化する場合は、これを考慮に入れる必要があります)。

◎二手ヨセコウも計算できます!
┌○●┬●┬●○
○○○●●●●○
├○●○○○○○
●┼●┼┼┼┼┼
●●●┼┼┼┼┼

同様に、上図のような二手ヨセコウでは、1手の価値は一手ヨセコウのさらに2/3、すなわち4目になります。1手の価値が4目というと、後手ヨセ8目と同等の大きさです。改めてそう考えると、二手ヨセコウといえども着手の価値が意外に大きいと感じられるかもしれませんね。


今回もお付き合いいただきありがとうございました。
次回からは、最初に掲げたテーマ、鍵型の隅の定形にサガリが利くのか?という疑問にチャレンジしていきたいと思います。
ぃーね!
棋譜作成
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