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囲碁訓戒
また地取り、石取り、敵地へ深入りし、石を逃ぐる、みな悪し。それ地取りは隙なり、石取りは無理なり、深入りは欲心なり、石を逃ぐるは臆病なり。
故に地と石を取らず、深入りせば石を捨て打つべし。地を取らざるは堅固、石を取らざるは素直、深入りせざるは無欲なり。石を捨つるは尖なり。
地に走ること、相手の石を取ろうとすること、相手の陣地深くに打ち込んで逃げ回る、これらは皆ダメな打ち方である。地に走ると相手につけ込まれる隙ができる。石を取ろうとすると無理な打ち方をしてしまう。相手の陣地に深入りするのは欲深い。石を逃げようとするのは臆病だ。
地も石も取らず、深く打ち込んだなら石を捨てることを考えるのがいい。地に走らなければ隙のない形になるし、石を取ろうとしなければ素直な打ち筋になる。深入りしないのは欲をコントロールできているということだし、石を捨てるのは巧い打ち方だ。
ここら辺はすごい。「地を取らず、石を取らず、打ち込みをしないでどうやって勝つんだ!」と思わずツッコミたくなる。
が、よく考えてみると実は非常に納得できる教えなのだ。そもそも一気に勝負を決めようと思わなければ、隙ができるほど地に走る、無理に相手の石を取ろうとする、生きる目処が立っていないのに相手の陣地に打ち込む、といった打ち方をする必要はない。
特に「早打ちして素直な手筋を心がけよ」という言葉と合わせるとわかる。早打ちするとともすれば、無理気味な手をめちゃくちゃに打ってしまいがちだ。それでうまくいってしまうこともある。だが、それも下達への道だろう。
ちゃんと形勢判断をし、無理な手は打たない。早打ちしつつも、これを心がけることでいい筋、正しい打ち方が自然と手に馴染んでくる、ということだろう。