ぴかぐりさんの日記

(Web全体に公開)

2009年
10月29日
23:30

ヨセ問題図の「差」の応用

タグ : 数学
http://senseis.xmp.net/?path=CGTPath&page=DifferenceG...
にあったヨセの問題とその解法を紹介します。

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■問題

次の図で外側の黒石と白石は活きていると仮定する。

●○┬○
●○┼○
●○┼○
●A┼○
●B┼○
●○○○

問題1:白が守るならばAとBのどちらが得か?
問題2:黒が出るならばAとBのどちらが得か?

■解法

上の図の白と黒を反転した別の図も用意し、
上の図と合わせた局面でAとBのどちらが優れているかを確認する。

■問題1(どう守るべきか)の解答

●○┬○  ○●┬●
●○┼○  ○●┼●
●○┼○  ○●┼●
●◇┼○  ○┼┼●
●┼┼○  ○◆┼●
●○○○  ○●●●

この図で左の白(A)と右の黒(B)のどちらが優れているかを確認しよう。

(1) 黒先の場合

黒1 左で出
白2 右で出(次図)

●○┬○  ○●┬●
●○┼○  ○●┼●
●○┼○  ○●┼●
●○┼○  ○◇┼●
●◆┼○  ○●┼●
●○○○  ○●●●

黒3 右で受け
白4 左で受け(次図)

●○┬○  ○●┬●
●○┼○  ○●┼●
●○┼○  ○●┼●
●○┼○  ○○◆●
●●◇○  ○●┼●
●○○○  ○●●●

黒先の場合の結果は持碁で差はない。

上の黒3右で受けを左で出にして「荒らし合い」に持ち込んでも
結果は同じ。

黒3 左で出
白4 右で出
黒5 左で上に出
白6 右で上に出
黒7 左で上に出
白8 右でアテ(次図)

●○┬○  ○●┬●
●○┼○  ○●◇●
●○◆○  ○●◇●
●○◆○  ○○◇●
●●◆○  ○●┼●
●○○○  ○●●●

黒9 左でアテ
白10 左でツギ
黒11 右でツギ(次図)

●○◇○  ○●◆●
●○◆○  ○●○●
●○●○  ○●○●
●○●○  ○○○●
●●●○  ○●┼●
●○○○  ○●●●

やはり持碁です。

(2) 白先の場合

白1 右で出
黒2 右で守り
白3 左で守り(次図)

●○┬○  ○●┬●
●○┼○  ○●┼●
●○┼○  ○●┼●
●○┼○  ○◇◆●
●◇┼○  ○●┼●
●○○○  ○●●●

白先の場合の結果は白1目勝ち。

上の黒2右で守りで左の出として「荒らし合い」に持ち込むのは
以下のように損になってしまう。

白1 右で出
黒2 左で出(次図)

●○┬○  ○●┬●
●○┼○  ○●┼●
●○┼○  ○●┼●
●○┼○  ○◇┼●
●◆┼○  ○●┼●
●○○○  ○●●●

白3 右で出
黒4 左で出
白5 右で上に出
黒6 左で上に出
白7 右でアテ(次図)

●○┬○  ○●┬●
●○┼○  ○●◇●
●○┼○  ○●◇●
●○◆○  ○○◇●
●●◆○  ○●┼●
●○○○  ○●●●

黒8 右でツギ
白9 左で守る

●○┬○  ○●◆●
●○┼○  ○●○●
●○◇○  ○●○●
●○●○  ○○○●
●●●○  ○●┼●
●○○○  ○●●●

これだと白2目勝ちになってしまう。
黒石の方が最初にアタリになったときに、
白石にアタリできないのがつらい。

(3) 結論

次の図で白はAに守るのが正解である。

●○┬○
●○┼○
●○┼○
●A┼○
●B┼○
●○○○

■問題2(どう出るべきか)の解答

●○┬○  ○●┬●
●○┼○  ○●┼●
●○┼○  ○●┼●
●◆┼○  ○┼┼●
●┼┼○  ○◇┼●
●○○○  ○●●●

この図で左の黒(A)と右の白(B)のどちらが優れているかを確認しよう。

(1) 黒先の場合

黒1 左で出
白2 右でコスミ(次図)

●○┬○  ○●┬●
●○┼○  ○●┼●
●○┼○  ○●┼●
●●◆○  ○┼◇●
●┼┼○  ○◇┼●
●○○○  ○●●●

黒3 左で上に出
白4 右で上に出
黒3 左でアテ
白4 右でアテ
黒5 右でツギ
白6 左でツギ(次図)

●○◇○  ○●◆●
●○◆○  ○●◇●
●○◆○  ○●◇●
●●●○  ○┼○●
●┼┼○  ○○┼●
●○○○  ○●●●

荒らし合いの結果は持碁になります。

(2) 白先の場合

白1 左で守り
黒2 右で守り(次図)

●○┬○  ○●┬●
●○┼○  ○●┼●
●○┼○  ○●┼●
●●◇○  ○◆┼●
●┼┼○  ○◇┼●
●○○○  ○●●●

白3 右で出
黒4 右で受け
白5 左で受け(次図)

●○┬○  ○●┬●
●○┼○  ○●┼●
●○┼○  ○●┼●
●●○○  ○●◆●
●◇┼○  ○○◇●
●○○○  ○●●●

白先の結果は白1目勝ち。

上の黒2を左で眼つぶしとしても結果は同じ。

白1 左で守り
黒2 左で眼つぶし
白3 右でコスミ
黒4 右で受け(次図)

●○┬○  ○●┬●
●○┼○  ○●┼●
●○┼○  ○●◆●
●●○○  ○┼◇●
●◆┼○  ○○┼●
●○○○  ○●●●

やはり白1目勝ち。

(3) 結論

次の図で黒はBに出るのが正解である。

●○┬○
●○┼○
●○┼○
●A┼○
●B┼○
●○○○

■結論のまとめ

次の図で、白はAに守るのが正解で、黒はBに出るのが正解である。

●○┬○
●○┼○
●○┼○
●A┼○
●B┼○
●○○○

この図の場合には「敵の打ちたいところに打て」と
いう格言が成立しないところが面白いと思います。

■組み合わせゲーム理論

上で使った分析方法は次のように一般化されます。

ヨセに関して
「黒が図Aと図Bのどちらを目指した方が得か」
を調べるためには
「図Aと白と黒を反転した図Bを合わせた図で
黒と白のどちらが有利であるかを調べればよい。
黒が有利ならば黒は図Aを目指した方が得であり、
白が有利ならば黒は図Bを目指した方が得である。」

このような考え方は碁のヨセの分析を超えた
もっと一般的な組み合わせゲームの世界に一般化されています。

ヨセの問題図A、Bが与えられたとき、
A図と白黒反転したB図を合わせた図を「ヨセ問題の差」
と呼ぶことにしましょう。

ヨセ問題の差: A図-B図=A図+白黒反転したB図

この式によってヨセ問題の「引き算」が定義されます。

このように、白黒反転した図と合わせた図を考えることは、
組み合わせゲーム理論で「ゲームの差」の話に一般化されています。
囲碁のヨセと組み合わせゲーム理論は非常に相性が良いです。

組み合わせゲーム理論に関する
日本語による読み易い解説は見付からなかったのですが、
英語が読めるならば次のリンク先が読み易いと思います。

http://senseis.xmp.net/?CGTPath
囲碁のヨセの分析に組み合わせゲーム理論およびその考え方が
どのように役に立つかが解説されています。

王銘エン著『絶対計算』を読んだことがある人は
「囲碁に関する組み合わせゲーム理論」=「絶対計算の数学的理論」
だと考えておけば間違いないでしょう。
伝統的なヨセ理論にはない概念が多数登場し
(特に温度(temperature)とサーモグラフィー(thermography)が重要)、
相当に豊かな理論に育っています。
ぃーね!

コメント

2009年
10月30日
10:35

なるほど…。
敵の打ちたい所に打て、が通用しないケースですか。

格言は時に依りけりってのは分かってましたが、「敵の~」は一番信頼していた格言なんで、これはまた面白いですね。

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