ぴかぐりさんの日記

(Web全体に公開)

2009年
09月23日
14:44

日本式純碁試案

タグ : 囲碁のルール
1999年に王銘エン九段はオセロなみにルールが単純な「純碁」を囲碁入門用に使
えるのではないかと提案しました。
http://park6.wakwak.com/~igo/golax/jungo/ohmei.html

ちなみに1968年に故池田敏雄氏が発表した囲碁ルール試案の「中国式I」は
「純碁」そのものです。
http://tmkc.pgq.jp/igo/

個人的に入門用に「純碁」を使うというアイデアは素晴らしいと思います。
「純碁」の優れた点は「盤上に存在する石の個数」によって誰にでも簡単に勝敗
を決定することができることです。

日本の慣習的囲碁ルールでは入門者どころか級位者にはどの時点で終局になった
かを判定することさえ困難であり、終局時に石の死活を正しく判定することも不
可能です。この問題は「純碁」を使えば簡単に解決します。

しかし、「純碁」は通常の「囲碁」とは異なるので、「純碁」から入った人は
「囲碁」のルールをもう一度覚えなおさなければいけないような気がします。

そこで、「純碁」のように勝敗の判定を死活の読みの能力なしに正確にできる
「囲碁」のルールを作成するという問題について考えてみました。

■日本式純碁試案

1. 対局の目的は終局時に
「自分の地の目数から取られた自分の石の数を引いて得られる値」
が相手よりも大きくなるようにすることである。
両対局者はできるだけ大きく地を囲い、
できるだけ多くの石を取るように努力しなければいけない。

2. 対局両者は交互に盤上の交点に石を置かなければいけない(着手)。
パス(着手放棄)しても構わないが、その場合には盤上に打つべきだった石
を取られたものとみなし、対局相手に渡さなければいけない。
もしくはすでに取った相手の石を相手に返却することで代用しても構わない。

3. 着手したとき、盤上の相手の石が自分の石で囲まれていたならば、
相手の囲まれている石を取ることができる。
自分に手番がまわって来たとき、なぜか着手する前なのに、
盤上の相手の石が自分の石で囲まれていることを発見した場合には、
それらの石を着手前に取ってしまっても構わない。
取れるはずの相手の石を取り忘れた場合には
次の自分の手番が来るまで待たなければいけない。

4. コウをすぐに取り返してはいけない。
コウを取り返してよいのは盤上の他の場所にどちらかが着手した後に限る。
一方の対局者が間違ってコウをすぐに取り返してしまった場合には
もう一方の対局者がもとの局面に戻してから対局再開を要求できる。
もう一方の対局者もコウをすぐに取り返されたことに気付かない場合には
そのまま対局を続行して構わない。

5. 両対局者が連続してパスをしたときに終局とする。

6. 終局時に盤上に残っている石はすべて活石(活きている石)とみなされる。
自分の活石だけで囲まれた盤上の空点の集まりを自分の地と呼び、
地の点の個数を地の目数と呼ぶ。
両対局者は終局までに自分の地にしたい部分に入り込んでいる相手の石を
すべて取らなければいけない。取ることに失敗すると地を失うことになる。

7. 両対局者は終局後にそれぞれの地の目数から取られた石の数を引いて得られ
る値を整地によって計算し、大きい方を勝ちとする。

8. 始めに決めたコミを考慮して勝敗を決めても構わないし、
置き碁にしてハンデをつけて対局しても構わない。

以上。

日本式純碁試案と通常の囲碁の違いは次の通りです。

A. 日本式純碁試案ではパスするごとに1目の損となる。この特徴はルール6と密
接に関係があります。日本式純碁では自分の地にしたい部分に入り込んでいる相
手の石をすべて取ってから終局にしなければ損をしてしまいます。もしも相手の
死石を打ち上げるために着手をするごとにその相手がペナルティのないパスで応
じことができるならば、死石を打ち上げることが損になってしまいます。日本式
純碁試案ではパスするごとに1目の損になるので、死石を打ち上げる側が一方的
に損をすることを防げます。

B. 日本式純碁試案では着手後に取れる石を取らずに相手に手番を渡すことが許
されている。囲碁を始めて習った人はよくやるものです。反則負けにするのはか
わいそうです。

C. 日本式純碁試案には着手禁止点がない。一方の対局者が着手禁止点に打って
しまった場合にはルール3にしたがってもう一方の対局者はその石を着手前に取
ることができます。囲碁を始めて習った人は着手禁止点に平気で打つので、反則
負けとするのはかわいそうだと思います。

D. 日本式純碁試案ではコウをすぐに取り返しても反則負けにならない。
囲碁を始めて習った人は間違ってコウをすぐに取り返してしまうものです。
それで反則負けとするのはかわいそうです。両対局者が気付かずに永遠に
コウを取り合い続けるということはないでしょう。どんな人であっても
どこかで「おかしい」と気付くはずです。気付いた時点でコウの正しい
ルールを適用して対局続ければよろしい。

E. 日本式純碁試案では終局時に盤上にあるすべての石が活石とみなされる。
このおかげで終局時の死活判定の難しさの問題が無くなります。

F. 日本式純碁試案ではセキの目も地とみなされる。セキの定義を入門者に説明
するのは無謀でしょう。盤上にある自分の石だけで囲まれた空点はすべて自分の
地とみなした方が分かり易いと思います。

実は上の日本式純碁試案のアイデアは池田敏雄氏が発表した囲碁ルール試案の
「日本式I、II」にあります。特に上のAで述べた部分は池田敏雄氏のアイデア
をそのまま頂戴しています。 http://tmkc.pgq.jp/igo/
だから上の日本式純碁試案は池田試案「日本式I、II」と相性が良いです。
池田試案「日本式I、II」についてはひとつ前の日記も見て下さい。

実際には、九路盤よりもさらに小さい六路盤で通常の囲碁ルールを大雑把に教え
た方が有利な場合が多いような気もしますが、パスに対してペナルティを与える
というルールにしておけば死石を打ち上げるまで打ち続けることにしても大丈夫
になる、というアイデアが面白いので、上の試案を発表することにしました。
ぃーね!
棋譜作成
: