ぴかぐりさんの日記

(Web全体に公開)

2009年
10月25日
22:11

通常の日本ルールの改善案2

タグ : 囲碁のルール
ひとつ前の日記では様々な歩み寄りルール(池田囲碁ルール試案の変種)
の中から通常の日本ルールに最も近い「日本式II’」について
詳しく説明しました。

「日本式II’」には私独自の工夫が入っていました(規則14の条件(a))。
その工夫によってダメ詰めをある程度省略したまま合理的に
「合意による終局」にすることができるようになっています。
しかし、相手に手入れを強制するためダメ詰めを省略することは
できません(省略すると損をしてしまう)。

日本の古典棋譜にはダメ詰めと手入れを大幅に省略した終局図があります。
そのような終局を合理的に可能にするためには
どのような手続きが必要でしょうか?

手入れの判定は簡単にはできず、読みが必要になります。
実は「日本式II’」で、手入れも省略した終局も正式にかつ合理的に
可能(非公式にはいつでも可能)にしたかったのですが、手入れの判定
が難しいことが原因で、手入れを強制しないダメ詰めだけが省略可能
ということになりました。

この日記ではダメ詰めだけではなく、手入れも省略した終局を正式に
可能とするルールについて考えることにします。

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■日本囲碁規約1989

まず、日本囲碁規約1989について考えましょう。
http://www.nihonkiin.or.jp/joho/kiyaku/kiyaku.htm
その第九条2の解説には次のように書いてあります。

1 「駄目詰め」、「手入れ」は必要着手
石の死活及び地を確認するためには、第八条により終局までに
「駄目詰め」及び「手入れ」を行わなければならない。

2 対局停止後での「駄目詰め」、「手入れ」は規定外
「駄目詰め」及び「手入れ」を、対局者の合意により、
対局停止後適宜に行う場合は、それらは規定上の着手に該当しない。

要するに、パスパスで対局停止になった後に、
対局者どうしの合意によってダメ詰めと手入れを
行なうことができるということです。
日本囲碁規約本文だけを見てもこのようになっていることは
わからないのですが、この解説文の内容を認めれば、
ダメ詰めと手入れを省略して終局にできます。

しかし、日本棋院は2006年1月から、
対局停止前にダメ詰めと手入れを行なうと規定を改めたようです。
http://www11.ocn.ne.jp/~igo-298/END-OF-GAME.htm
これによって日本のプロ棋戦では、
両対局者が望んでも対局停止の後にダメ詰めと手入れを行なって
終局とすることは不可能になりました。

これに関する詳しい情報を日本棋院のウェブサイトで探したのですが、
見付けることはできません。結局、日本囲碁規約が改正されたのか、
それともトーナメントルールの改定なのかがわかりませんでした。

■ダメ詰めと手入れを省略した終局図の存在のメリット

多くの正式囲碁ルールでは両対局者が連続してパスをしたとき
(つまりパスパスという手順で)対局停止となり、終局手続きに入ります。
だからパスの意味をよく理解することが重要になります。

十分に棋力の高い合理的な対局者であれば、
パスを使用するのは次の二つの場合に限るはずです。

(A) 相手に手番をわたしても損にならない。
(B) パス以外に損な手しか存在しない。

後者の(B)タイプのパスが終局前に起こったことが
NHK杯であったので紹介しましょう。
http://wiki.optus.nu/igo/index.php?cmd=kif&cmds=displ...
2009-09-06 ○ 中小野田智巳 vs 張栩 ● NHK杯、黒半目勝ち
の白248がパスになっています。半目勝負で、
最後のコウを白が取り返すためのコウ材はなく、
ダメも残っていないので、白はパスするしかありません。
最後に黒がコウをついで終局(黒半目勝ち)になりました。

(B)タイプのパスが連続するのはダメ詰め手入れが完了した後になります。
前者の(A)タイプのパスがダメ詰め手入れ完了前の終局に関係があります。

(A)タイプのパスは手止まりが打たれた直後に発せられます。
自分が手止まりを打ち、相手がパスしたとき、自分もパスすれば、
対局停止になり、終局手続きに入らなければいけなくなります。
しかし、上で説明したように、現在の日本棋院はそのような対局停止
を認めないという方針になったようです。なぜならば、
手止まりが打たれた時点ではダメが残っているのが普通だからです。

これはある意味残念なことです。
なぜならばこれによってプロ棋戦の棋譜を見ても
「対局者がどの手を手止まりとみなしたのか」が分かり難くなるからです。
棋士にとっても、(A)タイプのパスが連続して対局停止から終局とする
選択肢が奪われることは、囲碁による表現が制限されたことになるので、
不満な場合があるでしょう。

ダメ詰めと手入れを大量に省略した有名な古典棋譜に次があります。
1715-12-09 ○ 安井仙角(古仙角) vs 本因坊道知 ● 御城碁、黒5目勝ち
天元の左上あたりの空間が大きくあいたままの終局図になっています。
ダメが大量に残された終局図(無駄な石のない終局図)は
両対局者の棋力の高さと「美」の表現になっていたと考えられます。

まとめましょう。ダメ詰めと手入れを省略した終局図が可能ならば、
両対局者のそれによって棋力の高さや「の美」を表現することができ、
鑑賞者はそれによって高い棋力を持つ両対局者が
どの手を手止まりとみなしたかを知ることができるようになります。

この意味で、ダメ詰めと手入れを省略した終局図を可能にすることには、
「日本固有の文化」を超えた普遍的な合理性があると考えられます。

いずれにせよ、終局図として採用できそうな局面として、
手どまりが打たれた直後に(A)タイプのパスが連続した局面と
ダメ詰め・手入れが完了した後に(B)タイプのパスが連続した局面の
二種類があることは重要な事実です。
実はさらにダメ詰め・手入れが完了しているだけではなく、
死石がすべて打ち上げられた局面も候補に入れておく必要があります。
このような点について合理的な議論が尽くされていないことは
問題であると考えられます。 (←←←ここ重要!)

3種類の終局可能局面:
(A) 手どまりが打たれた直後の局面
(B) ダメ詰め・手入れが完了した直後の局面
(C) 死石がすべて打ち上げられた局面

あとで提案する囲碁ルールではこれらすべての場合に対応できます。

メリット:
(A) ダメ詰め・手入れを省略した最も早い終局。無駄を廃した美。
(B) 味の良い分かり易い終局図。
(C) 合意での終局に失敗しても完全に打ち切って決着を付けられる。

■「切れ負け」ルールとの相性

早い終局を可能にすることには、
短い持ち時間の対局を正常に終わらせる確率を高くするために役立ちます。
アマチュアの大会の多くは「切れ負け」ルールを採用しています。
ダメ詰めのあいだも時計を進めることを強制されてしまうと、
時間ぎりぎりに手止まりが打たれた場合には、
両対局者が時間切れで終わることを望んでいなくても、
終局までたどりつけなくなってしまいます。

だから、アマチュアの大会ではダメ詰めが完全に終わっていない段階で、
「終わりましたね」ということにして、時計を止めてから、
ダメ詰め手入れをすることは珍しくないと思います。
「ダメ詰めと手入れを残したまま対局停止とし、終局手続きに向かうこと」
を許すことにはこのような実用面でのメリットもあると考えられます。

秒読みのない「切れ負け」ルールは両対局者が無駄な手を打って時間攻め
で勝とうとしないことを前提にしたルールだと考えられます。
そのようなルールで気持ち良く打てる人であればたとえ自分が負けていても
相手の時間切れで終わらないことを望むものだと思います。

「切れ負け」ルールでは、ダメ詰め・手入れのに入る前に時計を止める
ことにできるようになっていた方がうれしい場合があると思います。

■デメリットは対局停止手続きが曖昧な場合に顕著になる

デメリットは対局停止手続きが曖昧な場合に顕著になります。

よくある「終わりましたね」方式には問題があります。
まだ、手が残っていることを必死に読んでいる最中に相手から
「終わりましたね」と言われた場合にはどう反応すればよいのか?
「終わっていません」と答えると、相手が手があることに気付いて、
すぐに手を入れてしまうかもしれません。
「パス」と言ってくれたなら、こちらの手番になるので、
ありがたく手をつけることによって勝ちに行けます。
「例の有名な事件」では「終わりましたね」と言われて
それを肯定したか否かが問われました。
明瞭に「パス」もしくは「着手放棄します」と言うことになっていれば
曖昧な「終わりましたね」にかかわる問題は無くなります。

そこまで合理的な勝負の決着の付け方にこだわらなくても良いではないかと
いう意見に私個人は賛成ですが、こだわりたい人の権利を奪うのはまずい。
アマチュアの大会でも、大会出場者は大変な努力をして来ているかも
しれないので、勝敗にこだわることを否定するのは本当にまずい。

これは逆も言えて、両対局者が時間切れによる決着を望んでいないのに、
ダメ詰め手入れをしなければ対局停止にしてはいけないというルール
を強制して、手止まりがすでに打たれているにもかかわらず、
時間切れによる決着にしてしまうのもまずいと思います。

対局者が欲する選択肢を合理的に用意することが
あるべきルールの姿だと考えられます。

■コンピューター囲碁の大会に適した日本ルール

コンピューター囲碁の大会で日本ルールを採用したいときに
日本囲碁規約を採用することには問題があります。
なぜならば日本囲碁規約では、パスパスで対局停止となった後の
合意による終局手続きにおいて双方の主張が食い違った場合に
合理的に決着を付ける方法が用意されていないからです。
そのような場合には人間の審判が終局図を見て判定を下さなければ
いけません。

これは非常に味が悪いし、
トーナメントを完全自動化することもできません。

コンピューターどうしに死石がすべて打ち上げられた局面まで
完全に打ち切らせてから、自動的に勝敗を決定することにすれば
このような問題は無くなります。

もしも日本囲碁規約以外に日本ルールの選択肢がないとすると、
完全打ち切りによる決着は不可能になるので、
中国ルールを採用するということになってしまうでしょう。

しかし、池田敏雄囲碁ルール試案タイプの日本ルールであれば、
中国ルールと同様に完全打ち切りで決着を付けさせることができます。

コンピューター囲碁の大会で日本ルールを採用するならば、
池田式の日本ルールが適していると思います。

同様の理由で国際ルールとして日本ルールを採用するならば、
味の悪い日本囲碁規約ではなく、
池田式の日本ルールが適していると思います。

現在の日本囲碁規約にこだわり続けると、
コンピューター囲碁や国際囲碁における日本ルールの立場が
どんどん悪くなって行く可能性があります。

■対局の流れ

以下のような流れで終局のオプションを複数用意しておけば、
両対局者の合意によって、
ダメ詰め手入れを残したままで終局手続きに入ることもできるし、
ダメ詰め手入れが完了した後に終局手続きに入ることもできるし、
死活で合意できなければ死活が明確になるまで打ち進めてから
終局手続きに入ることもできます。

対局の流れ

対局開始
  ↓
交互に着手またはパスの繰り返し。
手止まりが打たれる。
(ダメ詰め手入れが完了しているとは限らない)
両対局者による連続したパス。
  ↓
対局停止(時計も停止)
終局手続きに入るかどうか確認→ どちらか片方が No → (*)へ
  ↓両対局者が Yes
両対局者による交互着手によるダメ詰め手入れの実行。
途中で両者の主張に違いが生じたか?→ 生じた → (*)へ
  ↓生じない
ダメ詰め手入れの完了
ダメ詰め手入れの完了について両者が一致したか? → 不一致 → (*)へ
  ↓一致
死活とセキについて確認
両対局者の主張が一致しているか?→ 不一致 →(**)へ
  ↓ 一致
死石を盤上から取り上げハマとする。
整地して得点を計算して終局
(ダメ詰め手入れ完了前に対局停止して終局)

  (*)
  ↓
ダメ詰め手入れのために対局再開(時計も再開)
  ↓
交互に着手またはパスの繰り返し。
ダメ詰め手入れが完了する。
(損になる手しか残っていない状態になる)
両対局者による連続したパス
  ↓
対局停止(時計も停止)
終局手続きに入るかどうか確認 → どちらか片方が No →(**)へ
  ↓両対局者 Yes
両対局者が死活・セキについて確認
両対局者の主張が一致しているか?→ 不一致 →(**)へ
  ↓ 一致
死石を盤上から取り上げハマとする
整地して得点を計算して終局
(ダメ詰め手入れ完了後に対局停止して終局)

  (**)
  ↓
死活確認のために対局再開(時計も再開)
  ↓
対局再開直後に両対局者が連続してパスしたか?→ Yes →(***)へ
  ↓No
交互に着手またはパスの繰り返し。
ただしパスには1目のペナルティを課し、
同数着手ルールを採用しておく。
死活が明確になるまで手順が進んだ。
両対局者による連続したパス
  ↓
対局停止(時計も停止)
両対局者が死活・セキについて確認
両対局者の主張が一致しているか?→ 不一致 →(**)に戻る
  ↓ 一致
死石を盤上から取り上げハマとする。
整地して得点を計算して終局
(死活が明確になるまで打ち進めてから終局)

 (***)
  ↓
盤上に残った石をすべて活石とみなし、
整地して得点を計算して終局
(完全終局)

以上の流れの(**)より前の部分は慣習的な日本ルールにほぼ一致。
慣習的な日本ルールと大きく異なるのは(**)より後の部分です。

■ルールの詳細

●基本ルール

以上の基本ルールは対局開始から終局まで連続的に有効であるとする。

1. 両対局者は交互に盤上の交点に石を打つ(着手)かパスを行なう。

2. 着手によって囲まれた石は盤上から取り上げられ、ハマとなる。
着手は取れる石をすべて盤上から取り上げたときに終了する。

3. 着手によって石を取れないとき、その着手によって打たれた石
自身が取られる形になってはいけない(自殺着手の禁止)。

4. コウをすぐに取り返してはいけない。パスもコウ立てになるとする。

5. 同形反復のあいだに打ち上げられた石の数が同じになるような
同形反復着手によって引き分け(もしくは無勝負・再試合)になるとする。
三手以上前の局面(盤上の石の配置のこと、手番は無関係)が再現される
ような着手を同形反復着手と呼ぶ。

解説:たとえば、三劫、長生、循環劫で同形反復が起こった場合には
引き分け(もしくは無勝負・再試合)となる。

解説:同形反復のあいだに打ち上げられた石の数が異なるような同形反復
着手は禁止されない。そのような同形反復では一方が損をし続けることに
なるので、負けたくないならばいつかは同形反復を止めないといけない。
しかし、損をしながらの同形反復を禁止する立場もある。
コウ以外の同形反復の扱い方には複数の選択肢がある。

6. 対局者双方のパスが連続したとき、対局を停止する。

解説:すなわち、パス、パスという手順で対局停止となる。

7. コウ取りの直後に対局者双方のパスが連続することを禁止する。

解説:すなわち、コウ取り、パス、パスという手順は禁止する。
この規則の目的はコウをつがずに対局停止となることを防ぐことである。
コウ取り、パス、パスという手順を許すと、
コウの取り跡のツギが省略されたまま対局停止となってしまう。
パスもコウ立てになるルールでは規則7を仮定するのが自然である。

●最初の対局停止後のルール

8. 最初の対局停止直後に、まず両対局者は
「終局手続きに進むか、ダメ詰め・手入れのために対局を再開するか」
を確認する。両対局者による終局の意志が確認された場合には
以下の手順にしたがい、少なくともどちらか片方が対局再開を要請
した場合にはダメ詰め・手入れのために対局を再開する(ルール9を見よ)。

8-1. 対局停止の局面の続きで交互にダメ詰め・手入れを行なう。
そのあいだ、基本ルールのもとで合法的な任意の手だけではなく、
ダメ詰め・手入れの手順をもとに戻すこと(手順取り消し、undo)も許される。
さらにいつでも対局再開を要請でき、対局再開の要請があった場合には、
要請を受けた側が望むだけ手順取り消しを行なった後の局面の続きで
ダメ詰め・手入れのために対局を再開する(ルール9を見よ)。
対局者双方の連続してパスをしたら、
ダメ詰め・手入れが完了したとみなして次に進む。

解説:「手順取り消し」を許すのはダメ詰め・手入れの最中のうっかりミス
を救済するためである。「手順取り消し」を許したくない場合には
最初から「ダメ詰め・手入れのための対局再開」を要請すればよい。
そもそも相手の棋力を信頼できない場合には手どまりが打たれた直後にパス
するべきではなく、ダメ詰め・手入れが完了してからパスするべきである。
ダメ詰め・手入れを残したまま終局手続きに進むためには
両対局者が互いに相手を信頼していることが必要である。

解説:このルールのもとで棋譜を残す場合には対局停止にいたる連続した
パスも含めて記録に残すべきである。ダメ詰め・手入れの手順も記録に
残しておけば初級者にも優しい棋譜ができあがることになる。
たとえダメ詰め・手入れのような「余計な」手順が棋譜に残ったとしても、
どの時点で対局停止になって終局手続きに進んだかが明らかならば、
十分に「美」を表現することが可能である。なぜならば、
棋譜の鑑賞者は連続したパスで対局停止になった局面を見付けることができ、
ダメ詰めと手入れを省略した「終局図」をいつでも鑑賞できるからである。

8-2. 両対局者が「どの石が死石でどの石がセキか」について確認する。

8-3. 両対局者の死活とセキに関する主張が一致しない場合には
死活確認のために対局が再開されるものとする(ルール10を見よ)。
ただし、ダメ詰め・手入れが完了した局面の続きで
対局が再開されるものとする。

8-4. 両対局者の死活とセキに関する主張が一致した場合には
死石を盤上から取り上げハマとする。

8-5. 以下の式で両対局者の得点を計算する。

 黒の得点=黒地の目数-ハマの黒石の数
 白の得点=白地の目数-ハマの白石の数

死石を盤上から取り上げた後に盤上に残った石を活石と呼ぶ。
ダメとは黒と白両方の活石で囲まれた空点の集まりのことである。
セキ以外の同色の活石だけで囲まれた空点の集まりを地と呼ぶ。
地の空点の個数を地の目数と呼ぶ。

8-6. 終局。

解説:これで終局になれば通常の日本ルールとほとんど完全に同じ。

解説:8-1の手続きの味が悪さが気にいらない場合には、
8-1を省略して、8-2に進むようにルールを変更すればよい。
その場合にはダメ詰め・手入れを完了してから対局停止になるように
しないと、対局者のどちらかが思わぬ損をしてしまう可能性がある。

注意:日本囲碁規約と違って、このルールでは 8-2 で死活とセキの判定法
を定める必要がない。対局者はその気になればすべての死石を打ち上げる
まで(完全終局まで)対局を継続することができる。両対局者は自身が想定
する完全終局図に基づいて死活とセキを判定すればよい。
日本囲碁規約では死活確認のために通常の囲碁の基本ルール
(交互着手、打ち上げ、劫をすぐに取り返すことの禁止、自殺着手禁止)
とは異なる奇妙なルール(日本囲碁規約第七条)を採用している。
http://www.nihonkiin.or.jp/joho/kiyaku/kiyaku07-1.htm
日本囲碁規約では死活確認に入るとあたかも通常の囲碁とは異なる競技が
始まるがごとくである。日本囲碁規約では、死活確認で合意できないとき、
対局再開継続によって合理的に決着をつけることも不可能である。

●「ダメ詰め・手入れのための対局再開」の後のルール

9. 「ダメ詰め・手入れのための対局再開」の後に
対局者双方の連続したパスによって対局停止になったら 8-2 に進む。

●「死活確認のための対局再開」の後のルール

解説:このルールでは死活確認を対局再開継続によって
合理的に行なうことができる。

10. 「死活確認のための対局再開」の後には以下にしたがう。

10-1. パスには1目のペナルティが課される。すなわち、
パスするときに相手にハマとして自分の石をひとつ渡す。

10-2. 対局再開直後に
対局者双方の連続したパスによって対局停止になったら、
ルール11で定められた完全終局手続きに進む。

10-3. 対局再開してひとつ以上の着手がなされた後に
対局者双方の連続したパスによって対局停止になったら 8-2 に進む。
ただし、もしも最後のパスを最初の「死活確認のための対局再開」
直後の手番の対局者が行なっていた場合には、
最後のパスのペナルティ(10-1を見よ)を免除するために、
8-5 の得点計算の前にそのパスで渡されたハマを返却しなければいけない
(同数着手ルール、11-1も見よ)。
さらに8-5の得点計算を次の式によって行なう。

 黒の得点=黒地の目数-ハマの黒石の数-黒の無駄石の数
 白の得点=白地の目数-ハマの白石の数-白の無駄石の数

ここで無駄石とは最初の「死活確認のための対局再開」以後に打たれた
活石でセキに含まれるもののことである(11-2も見よ)。

解説:「死活確認のための対局再開」の後に、
パスと無駄石に1目のペナルティを課すことの目的は、
死活確認のための手順で片方の対局者が
一方的に損をすることを防ぐことである。
たとえば「劫づくし」によって隅の曲がり四目を取りに行く側は
自分の地に手を入れて相手からのコウ材を消さなければいけない。
そのような損になる手を片方だけが一方的に打たなければいけないようだと、
対局再開によって死活の決着を合理的につけることができなくなってしまう。
セキはもともと得点にならないのでセキの中に手を入れることは
通常損にならない。そのような損にならない着点の存在を許してしまうと、
一方が損な手を打ったときに、もう一方が損にならない着手で応じることが
できてしまう。それを防ぐためには無駄石にもペナルティを課す必要がある。
同数着手ルールによって、最初の「死活確認のための対局再開」後に
両対局者は同じだけ損な手を打つことを強制される。これによって
両対局者は安心して死活確認のための手を打つことができる。

注意:ダメ詰めが完了する前に「死活確認のための対局再開」になると、
ダメ詰めという損にならない着点が残ってしまう。それが原因で一方が
思わぬ損をしてしまうことがありえる。ひとつ前の日記の「日本式II’」
のアイデアを使えばその問題を緩和できるが、手入れを強制するための
ダメ詰めが完了していないと、やはり思わぬ損をしてしまう場合が出て来る。
「死活確認のための対局再開」を許すルールではそうなる前に両対局者は
ダメ詰め・手入れを完了するように注意しなければいけない。

●完全終局

解説:完全終局局面として、ダメ詰め・手入れが完了しているだけではなく、
すべての死石が打ち上げられ、二眼を持って活きることのできるすべての石
が二眼を持っている状態になった局面を想定している。

11. 完全終局手続きは以下にしたがう。

11-1. もしも最後のパスを最初の「死活確認のための対局再開」
直後の手番の対局者が行なっていた場合には、
最後のパスのペナルティ(10-1を見よ)を免除するために
そのパスで渡されたハマを返却する(同数着手ルール)。

11-2. 以下の式で両対局者の得点を計算する。

 黒の得点=黒地の目数-ハマの黒石の数-黒の無駄石の数
 白の得点=白地の目数-ハマの白石の数-白の無駄石の数

最後に盤上に残った石を活石と呼ぶ。
一方の着手にもう一方がパスで応じるとき(すなわち一方のみの
連続した着手によって)打ち上げ可能な活石をセキと呼ぶ。
セキ以外の同色の活石だけで囲まれた空点の集まりを地と呼ぶ。
地の空点の個数を地の目数と呼ぶ。
無駄石とは最初の「死活確認のための対局再開」以後に打たれた
活石でセキに含まれるもののことである。

11-3. 終局。

以上です。
ぃーね!
棋譜作成
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