朝日新聞ですが、東北のバス会社がますます苦境に立たされているそうです。ピンチをチャンスに変える工夫が、東北再生への道でしょうが、誰が音頭を取ったとしても、楽な道ではありません。
でも、閉塞感で苦しめられていた日本全体にとっても、一つのチャンスと出来るような気もします。
東日本大震災の直後にいち早く復旧し、被災者の足になった被災地のバス会社が苦境だ。震災前からの経営難に加え、震災で利用が激減。復興を名目に政権内で浮上した「東北道無料化」構想でマイカー利用者が増えれば、さらなる窮地に追い込まれかねない。
宮城県気仙沼市で路線バスを運行するミヤコーバス(仙台市)は、津波とその後の火災などで営業所とバス31台を失った。仮の営業所を置く高台の美術館駐車場には、宮城ナンバーに交じって「石川」や「金沢」ナンバーのバスが4台。同じグループ傘下の北陸鉄道(金沢市)から提供された。
親会社の宮城交通(仙台市)と合わせ、約700台のバスで、県内外を結ぶ高速路線と、地域の路線を運行する県内最大手だ。路線バスは震災翌日から仙台市内で運行を再開し、4月下旬には気仙沼など沿岸部を含めほぼ平常ダイヤに戻った。
だが、宮城交通の牧野英紀・社長室長心得は「大型連休明けに、震災前の水準まで利用者が戻るか、相当悲観的に考えている」と表情を曇らせる。
震災後、復旧に時間がかかった新幹線や在来線に代わり、被災地とほかの東北各地、首都圏を結んだのは高速バスだった。業界全体で4月22日までに20万人を運んだ。だが、国土交通省によると、震災直後に増便した多くは首都圏のバス会社。被災地のバス会社は地元路線の再開に力を注ぎ、「高速バスでの『特需』はなかった」(牧野室長心得)という。
これまで、バス会社の多くは路線バスの赤字を高速バスで得た収益や自治体の補助金で穴埋めしてきた。だが、震災前から高速道路料金の割引などで収益が悪化。2008年から09年にかけて岩手県北自動車(盛岡市)や福島交通(福島市)など各地の大手が民事再生法や会社更生法の適用を申請した。
ここに震災が追い打ちをかけた。岩手、宮城、福島の3県の沿岸部では、50台以上のバスと複数の営業所が津波で使えなくなった。バス1台の購入には約2千万円かかるとされ、数億円単位の被害を受けた会社もある。福島第一原発周辺の相双地区では、新常磐交通(福島県いわき市)の26路線すべてが運休したままだ。
菅政権では、物流コストを下げて復興に生かそうと、東北道や常磐道の料金無料化の動きが出ている。だが、各社からは「マイカー利用が加速しかねない」と心配する声も上がる。在来線など鉄道の復旧見通しが立たない中、バス路線が廃止されれば、通学や高齢者の通院に支障を来すおそれもある。
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一方、首都圏から観光客を呼び込んで低迷を脱しようとするバス会社もある。
岩手県北自動車は東京―盛岡の高速バスに弘前(青森県)や角館(秋田県)など東北の桜の名所をめぐるツアーを組み合わせた「ケッパレ東北! みちのくさくら紀行」を、震災後に売り出した。4月24日から今月6日までに約320人が参加した。
震災後、同社のバスツアーは数百人単位で予約がキャンセルに。だが、「さくら紀行」は連休の後半、満員になるツアーも出たという。
ただ、先行きは楽観できない。夏場に多くの観光客が集まる陸中海岸国立公園(岩手、宮城)は、津波で見る影もなくなっている。「夏休みに向け、今が知恵の絞りどころ」という。
アイデアの一つが、夏場の首都圏の電力不足を見込んだ「エコツアー」。避暑を兼ねて十和田湖や八幡平を訪れてもらい、北東北全体の経済活性化をめざすという。同社の担当者は「地元の人の移動が盛んになることが最終的な目標だが、当面は首都圏の人に、被災地以外は大丈夫だと知ってもらいたい」と説明する。(永田工)