前回のこのテーマで、ストレス反応は生き残るための、生物種としての本来都合が良いはずの反応が体の中で起きているという話を書きました。
では、どんな反応が起きているのでしょうか?
クマやオオカミに出会ったとしたら、危険に対処するため、投げ飛ばすか逃げるのに、都合の良い反応が自然に起きているのです。
具体的には、闘うか逃げるかするためには、身体に早急に大きなエネルギーが必要となります。脂肪がグルコース(糖分)に分解されたり、肝臓に蓄えられていたグルコースが血中に放出されたりします。
同時に呼吸は速くなって酸素を取り入れやすくなり、取り入れた酸素や血中に増加したグルコースをできるだけ筋肉に供給するために、血圧が上がり、心拍数が上昇します。脾臓は蓄えていた赤血球を血中に放出し、酸素の運搬を助けます。体内に、酸素や血糖が早く循環するようになるわけです。
脳や筋肉は、血液の分配を受けて活動がし易くなります。
これを「Fight or Flight反応」と言います。
ストレス刺激に遭遇すると、身体は2つの命令系統によって反応します。
視床下部⇒脳下垂体前葉⇒副腎皮質⇒コルチゾール・エンドルフィン等
内分泌系の反応
視床下部⇒交感神経系⇒副腎皮質⇒ノルアドレナリン・アドレナリン等
神経系の反応
神経系の反応は速やかに始まり、危機対応が終わるとすぐに脱することが出来ます。
ところが、内分泌系の反応はストレス状態に入るのに、数分間かかり、ストレス反応から脱するのに数時間かかるという性質を持っています。
内分泌系の反応は、さまざまな身体の状態を引き起こします。
呼吸・心拍数・赤血球・グルコースについてはすでに書いています。
そのほかにも、覚醒水準が上がります(寝られなくなります)。出血を抑えるために血管が収縮します(血圧が上がります)。
白血球を生成したり、胃腸で食べ物を消化したり、性欲などは緊急時に必要でないので、低下します。
自律神経失調症で、不調になるところばかりですね。
本当に、危険なときにこの反応が起きれば、役に立つのですが、会社で上司に怒られたり、嫌なことをしなければ成らないなど、心理的ストレスを受けたときにもこの反応は起きてしまいます。
このような、異常危険に対する準備を身体がしょっちゅう行っているのに、準備したエネルギーも使われずにいるために、長く血液中に過剰なグルコースが存在し続けるために、血液がどろどろになったりしているのです。
嫌なことがあったら、寝る前に運動したりして体力を消耗させ、身体が準備したエネルギーを使って上げてから、自律訓練法を行ったり、お風呂に入ってリラックスして、身体と心に危険は去りましたよと知らせてから寝るようにすれば、いろいろな心身症の予防や、治療に役立ちそうだと言うことが、こうした知識を身につければ自然に分かると思います。