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チェルノブイリをきちんと振り返り、福島のことを考える良い記事です。
福島第一原子力発電所の事故は、国際原子力事象評価尺度(INES)で旧ソ連のチェルノブイリと同じレベル7に格付けされた。福島ではメルトダウンも起きている。今世紀最大の原子力発電所事故であり、今なお収束していないが、その規模は冷静に比較するとチェルノブイリ事故ほどではない、という見方が有力だ。
▼ チェルノブイリ事故の特徴
福島第一原子力発電所はレベル7でメルトダウンであり今なお放射性物質を放出している。これらの状況からこれまで最悪の原子力発電所事故とされるチェルノブイリが引き合いに出されることが多い。チェルノブイリでの事故とはどのようなものだったのだろうか。
チェルノブイリでの事故は、試運転中に発生した。試運転をしていたら制御ができない状態になってしまった事故である。
制御棒を操作して、出力を抑えようとしていた時に出力が急激に上がり、炉心溶解が発生。そこから水蒸気爆発が起き、圧力容器が壊れてしまい、原子炉内の燃料が環境中に放出されてしまった。
続いて減速材に使われていた黒鉛に火がつき、大規模な火災に発展。炉心溶解している中での火災で、その火災によって、より多くの放射性物質が外部にまき散らされることとなった。
▼ 福島第一原子力発電所事故との比較
原子炉の分類は主要な構成要素によって分けられる。核燃料、減速材、冷却方法だ。主要な構成要素としては他に制御棒がある。
今、チェルノブイリと同じような黒鉛を使った原子炉は、ロシアにいくつかある程度で、世界の原子炉は基本的には水を減速材としている。福島第一原子力発電所の原子炉も水を減速材に利用する型で、沸騰水型原子炉(BWR)と呼ばれるものだ。チェルノブイリのように黒鉛による火事の心配はなく、また格納容器が放射性物質の放出を防ぐ役割を果たすため、格納容器のないチェルノブイリ型より福島第一型の方が相対的に危険性は低いと言える。
福島第一原子力発電所の事故では、主な放射性物質の漏れは核燃料の燃えカスとも言えるもので、核燃料から出た揮発性の物質やガスが出ている。一方チェルノブイリでは、その発生源たる核燃料自身が飛び散って、さらに火災によって周辺へまき散らした。
INESのレベル7とは、評価基準の一つに「計画された広範な対策の実施を必要とするような、広範囲の健康および環境への影響を伴う放射性物質の大規模な放出」とあり、環境への放射性物質の放出量がヨウ素131換算数万テラベクレル以上でこの基準に達すると言われる。
この評価からすると福島第一原子力発電所事故はレベル7だが、レベル7とは、それ以上であれば、全てレベル7となる。4月12日の原子力安全委員会の推定では事故発生以降の放射性物質の総放出量は63万テラベクレル。これはチェルノブイリの1割程度とも見ることができる。事故直後に大規模な放出がありそれ以降は1日あたり100テラベクレル程度で推移していることを考えると、チェルノブイリの放出量を超える可能性は低そうだ。ただし100テラベクレルは、普通に考えれば大変多く、未だ事故は続いており予断の許さない状況であるが、悪いなりに安定しているためこれ以上の大きな被害の心配は少ないだろう。
(2011年6月7日 前川静剛