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　私にはネット碁幽玄の間で３年ほど前に知り合ったＡさんという親友がいます。
　Ａさんはホントに碁キチ。ほぼ毎日１０数局打ち、２級～２段を行ったり来たりでした。　私と知り合ってからは打つだけでなく、考えに賛同してくれたりアドバイスを聞いてくれたり、本人もよく勉強されて３段に定着するようになりました。
それが昨年１０月くらいからＡさんが快進撃。年末までにRPも７段まで上がりました。私との碁でもこっちが押され気味に。　『こんなに強くなれるのか！』　大躍進したＡさんを素直に嬉しく思い、他の人にも『やれば出来る　Ａさんを見よ！』と言ったりしてました。

　ところがそのＡさんが今年２月頃からパッタリ顔をださなくなったんです。１か月ほどして、『何かあったのでは？』と心配していた時、突然Ａさんから『幽玄を退会する』と告げられ驚きました。

　そしてさらに、やはり親友のＢさんから『Ａさんは’天頂の囲碁3’というソフトを使っているようだ』という衝撃的な言葉を聞きました。
Ｂさんが言うには①Ａさんの打ち方がソフトの特徴と酷似する事 ②Ａさんの快進撃がソフト発売の直後から始まってる事 ③２ｃｈなどでソフト打ちの話が出た頃Ａさんがいなくなった　などです。　私も『そういえば。。』という何点かの疑問に得心出来たしだいです。
　Ｂさんと話したのは「Ａさん自身が一番辛い思いをし、２度とネット碁に戻れないのでは」ということでした。　もちろん私を含めＡさんの友人全員が”そのこと”とは関係なく、Ａさんの帰りを待っています。　でもたぶんそれは叶わないでしょう。

　「今日で退会する」という日にＡさんと長い話をしました。　何局かの思い出の対局などを話し、詮索するような事は何も言いませんでした。　『今は囲碁より他のものに時間を使いたい。　碁は何十年か先に碁会所でもやるかな』と言っておられました。　碁敵であった私には、なんとも辛い話です。そして何より親友を失うのが辛い。

　今回のＡさんの事は１つの”悲劇”だと思います。　
誰しも”魔法の薬”を呑む誘惑はある訳ですが、悪い条件がそろっていた。囲碁ソフトがあまりに強くなってしまった事。そしてその”リスク”というのか”悪例”がまだ世に出てなかった事。　Ａさんは’罪の意識’はまるでなく、自分一人が使っているような（あるいはソフトも’自分’という）錯覚で行く所まで行ってしまったのではないでしょうか。

　やりきれない寂しさが残った、悲しい出来事でした。