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大倉喜七郎賞受賞記念対局譜
先 黒 六段 本田忠
白 七段 田浦直
四譜(82~115)
マムシの本忠
本年三月、パンローリング社から「侠気の相場師 マムシの本忠」が刊行された。予想をはるかに上回る好調な売れ行きで、長崎の有名書店ではベストセラーになっている。
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この本は元日本経済新聞記者の鍋島高明氏が、相場師として、経営者として、激動の時代を疾走した本田さんの壮絶な生きざまを描いたものである。
本田さんが仲間数人で昭和三十六年に長崎で旗揚げした吉原グループは、企業買収・再生を繰り返しながらわずか十年余りで急成長、商品先物業界に一大勢力を築きあげる。
その様子が「国盗り物語」の斉藤道三に似ているため、投資日報社長の鏑木氏が畏敬の念を込めて「マムシの本忠」と命名した。
ところが、本田さんをモデルにしたフィクション経済小説「仕手相場」が徳間文庫から出版され、いつの間にか、敵対する相手を締めあげ命脈を絶つ恐ろしい毒マムシという虚像が作り上げられた。実際は本のタイトルにあるように侠気の人であるのだが。
また、本田さん直系の会社が四社も株式上場を果たすなど経営者としての功績も大きい。未練を残さずすべてを後進に譲り、自ら第一線を退いたのも本田美学として高い評価を受けている。この本はベールに包まれた本田さんの実像に迫る作品であり、興味のある方はぜひ一読されたい。
さて、譜面だが、白84と切られ黒の大石がピンチになっている。しかし、ここから本田さんは絶妙のシノギを見せる。黒93からシボリを決め、黒101に割り込む。白104までは一本道。黒105、107の後、109のワリコミが手筋で黒113まで鮮やかにしのいだ。白108で112と打てば黒危険そうに見えたが、局碁の検討では白も薄く一筋縄ではいかない。白114は本手だがS7と頑張りたい。黒115が地と白への攻めを見てべらぼうに大きい。黒が地合いで大きくリードしている。(長崎美人)
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※ 本観戦記は昨年、長崎新聞に掲載されたものです