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大倉喜七郎賞受賞記念対局譜
先 黒 六段 本田忠
白 七段 田浦直
五譜(116~212)
逆転の匂い
田浦さんも本田さんも名前は「ただし」、知名度は全国級、歴史・文学に詳しいという点で共通している。
本田さんと旅行したことがあるが、いつもカバンに数冊の書物を詰め込み、飛行機の中でも、ホテルの部屋でも読みふけっている。
幼少のころから家庭教師が二人も付いていたそうで本田さんの知識は並みではない。
碁の本しか読んだことのない私は、話がよく理解できずにうなずくしか術がない。
若き日の田浦さんも文学青年で小説家を夢見ていたという。
二十年ほど前、夢をかなえるべく「ルブルム先生 喜怒哀楽」という短編小説を出版されている。
そして何よりもお二人に共通するのは誠実で謙虚な人柄であろう。偉ぶったり相手を見下したりすることは全くなく、誰と話す時も目線が同じである。
白116を見て、本田さん「強い石に近づいてきたか」と言いながら、黒117
から123と白の大石を攻める。
124はシノギの手筋。黒125では126と打ち、白P13、黒125と黒2子を捨てて、黒F17か168の三々に回れば黒の優位は動かなかった。
白128と急所を切られ事件である。「流浪の旅に出るか」黒131、133と黒石を担ぎ出す。以下、白142まで見るからに黒が苦しい。
しかし黒143を決めて145が鋭い反撃。
「筋だね」と盤側の武藤和義さんが感心する。
「こんな所がうまいからな。私は人がいいからすぐだまされる」と田浦さん。
「政治家の言うことは信用ならん」と本田さんが切り返す。
ところが、白146 に黒147の二段バネが勇み足で白148、150と打たれ再び大石がピンチになる。黒147では148と頭を出しておけば無事だった。
結局、黒の大石は白の花見コウになり、白が210 、212 と連打して三十目を超える大利をあげた。本田さんは投げっぷりがいい。ここで投了すると思いきや、ヨセを打ち始める。
マムシの本忠、逆転の匂いがするのか。この後、大事件が起こる。(長崎美人)
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※ 本観戦記は昨年、長崎新聞に掲載されたものです