幼年期
私の上に降る雪は
真綿のやうでありました
少年期
私の上に降る雪は
霙(みぞれ)のやうでありました
十七-十九
私の上に降る雪は
霰(あられ)のように散りました
二十-二十二
私の上に降る雪は
雹(ひょう)であるかと思はれた
二十三
私の上に降る雪は
ひどい吹雪とみえました
二十四
私の上に降る雪は
いとしめやかになりました………
Ⅱ
私の上に降る雪は
花びらのやうに降つてきます
薪の燃える音もして
凍るみ空の黝(くろ)む頃
私の上に降る雪は
いとなよびかになつかしく
手を差し伸べて降りました
私の上に降る雪は
熱い額に落ちもくる
涙のやうでありました
私の上に降る雪に
いとねんごろに感謝して、神様に
長生したいと祈りました
私の上に降る雪は
いと貞潔でありました。
..
コメント
11月04日
01:02
1: -
中原中也の詩ですね。
昔、中也のことはファンでした。
今では、そういう詩情はなく、演歌の歌詞の方が身にしみますが。。
この雪とは女性を指す、という注解があります。
小林秀雄に取られた長谷川泰子のことを指していると思われる一節もあります。
神様がでてくるのは、養祖父(父が開業医となるため養子となった)夫妻がクリスチャンであったことと関係があるのでしょうか。
いずれにせよ、美人さんの意外な一面を見た思いです。
11月04日
01:14
2: 長崎美人
お詳しいですね
文学には無縁の私ですが、多感な若い頃、中也に魅かれました
今でも時々思い出して詩集をめくります