STONECOLDさんの日記

(Web全体に公開)

2012年
02月02日
00:04

きみは、”怪腕”「やっし~」を知っているか -矢代久美子五段の神技-


第1回女流秀策杯準決勝の組み合わせは、以下の通り。
Aブロック: 矢代久美子五段 vs 呉理沙さん(立命館大)
Bブロック: 奥田あや三段 vs 万波奈穂二段

Bブロックの対局は、どちらを応援するわけにもいかず、
Aブロックの対局を観戦していました。

プロ・アマの対局には三つのハンデが設定されています。
①持ち時間(プロ30分、アマ40分) ※秒読みなしの切れ負け
②アマの定先
③持碁、黒勝ち

この三重苦に加え、「もうぜったい、アマには負けられない」という
大きなプレシャーを背負い、矢代久美子五段もいささか慎重になり
過ぎたのか、あっという間に残り時間がさみしくなってきました。

「あー、矢代さん、時間がない」とざわめきだす観客席。
そして、だれもが矢代さんの「切れ負け」と目を覆った瞬間、
信じられないことが起こりました。

「打つ」、
「アゲハマをとる」、
そして、「時計を押す」、
この一連の動作に要する時間、「一秒」。

矢代久美子五段のマシンガンが炸裂したのです。

「ピシッ」 (静かな対局会場に響き渡る石音)
「パシーン」 (そんなにしたら、時計がこわれるって)

「ピシッ」
「パシーン」

「ピシッ」
「パシーン」

ボーゼンと、口をあけて観戦する者。
「すっげー」と小さくつぶやく人。
観客たちが、かたずを飲んで勝負のゆくえを見守るなか、
やがて、矢代久美子五段の手が止まり、ひとつ大きく
深呼吸をされました。

と同時に、呉理沙さんの首がガックリと折れ、わたしたちは
呉さんの決勝進出の道が絶たれたことを知りました。

「切れ負け」のまさに寸前、残り1分で矢代久美子五段は
終局まで打ち切ってしまったのです。

(007風に言えば、ジェームズ・ボンドが起爆装置のスイッチを
切ったとき、タイマーは「00:00:02」を表示していた)


最高のパフォーマンスで、観客を魅了した 「やっし~」。

『めっちゃ、カッコよかった♪』

まさに、プロの矜持を見せつけられた思いです。

”怪腕”「やっし~」に、栄光あれ。
「もう一度、女流本因坊を」 と願わずにはいられませんでした。


P.S.
第1回女流秀策杯は、万波奈穂二段の優勝で幕をとじました。
奈穂先生、おめでとう~。

最後に、呉理沙さんにひと言。
プロ棋士をあれほど本気にさせたあなたは、とても立派でした。

(完)
ぃーね! (3) 長崎美人  余話  天和 
棋譜作成
: