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大倉喜七郎賞受賞記念対局譜
先 黒 六段 本田忠
白 七段 田浦直
二譜(19~45)
強い一日
黒27までの流れを見ると、黒は23のコスミツケ、25の二間ヒラキ、27と要所を占めている。石が一杯に働き、黒に不満のない布石といえる。これを嫌えば白にも変化する余地はあった。例えば白22ではS16とケイマにすべる、白26でR3と三々に入るなどである。田浦さんの碁は本格派でいわゆる本手が多い。形に明るく守るべきところはきちんと守り先を急がない。白26としっかり構え、黒27を許しても白30に回れば遅れないという判断だろう。
田浦さんが参議院議員として国政の中枢で活躍されていた頃、「政治はいつか辞める時がくるが囲碁は一生の友、政治にかまけて囲碁をおろそかにするなかれ」と書かれた名刺をいただいたことがある。一流のユーモアの中に囲碁への強い情熱が感じられる。
また、五人抜き戦を制するなどその実力は誰しも知るところであるが、恐ろしく強い一日があったことはあまり知られていない。二十年以上も前のアマ本因坊戦だったと思う。組み合わせを見ると私は激戦パートに入っており、県代表クラスの竹内栄一さん(故人)や優勝候補の森崎俊充さんがいる。竹内さんが一回戦で田浦さんに敗れる。二回戦の相手は田浦さんだ。序盤から厳しく攻めていった。自分の模様に追い込み一気に撲殺を図る。しかし、強引な攻めが裏目に出て生きられた瞬間私の負けが決まった。このあとがすごい。
強豪森崎さんを相手に白番で鮮やかな打ち回しを見せる。森崎さんはペースをつかめず必死に勝負手を繰り出すが、的確に対応して森崎さんを投了させた。惜しくも次の準決勝で敗れたが、県代表クラスを三人連破しその一人が森崎さんならば優勝に匹敵する快挙である。
白44のマゲを見て、本田さんは白模様に黒45と鋭く打ち込む。黒J4のカタツキでは物足りないとみたもの。強くないとこの手は打てない。(長崎美人)
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※ 本観戦記は昨年、長崎新聞に掲載されたものです