碁会所J
通い始めて2年程経つこの碁会所には、顔なじみが大勢できた。木曜は、そのなじみが最もよく集まる日である。
今日も皆さんの顔を観に、仕事帰りに立ち寄った。碁席はすでに賑やかだ。まずYyさんと8子局を打ち始める。
するとほどなく、Sdさんが碁会所のドアを開けた。聞こえてくる話によれば、どうやらこの週末に大会があるらしい。宝酒造杯とは違う、彼の地元の名人戦とのことだった。
そして大会前の特訓に、是非私と打ちたいとおっしゃっていた。ほほう、そういうことなら喜んで。
Yyさん 向8子 逆コミ4.5 w+12.5
Yyさんとの碁は、8子としては会心の出来だった。これならSdさんの特訓相手もちゃんと務まることだろう。
Sdさんとは、普段なら向2子の手合いである。それで若干私の方が分が悪い。こちらも緊張感を持って臨まなければならない。
45分切れ負けという大会の規定の通りに対局時計をセットして、握りから始める。時計の電池が最初見当たらなかったのは今回だけ許そう(笑)。
序盤はややリードして進んだ。お互い同じようなペースで時間を使う。
やがて中盤の難所が続き、時間がみるみる減っていった。そして、まだ中盤の激しい攻防が続いているさなか、お互いの残り時間が13分を切ったあたりから、碁がおかしくなっていく(笑)。ミスが出始めたのだ。
私は、静かにぼやく。だがSdさんは大声で「うわ~やっちゃった!……」と何度も身をよじる。後で聞くと、大会でも同じようにミスを引きずってしまいがちなのだとか。
対局中もSdさんがミスを気にし過ぎているのがわかったが、そこは特訓である。私はあくまで静かにミスを咎め、残り少ない時間の中で目算を行い、安全にヨセを打つ。もちろんミスは私にもたくさんあっただろう。だが、時間がなければ無いなりの打ち方があるというわけだ。
終局はお互いの赤い針が浮き上がる中、最後のダメ詰めまで時計を押し続けてもらった。これも特訓。
Sdさん 互先黒 b+15.5
最後はこちらがどうやら面目を施した。Sdさんは、まるで大会が終わったようなすがすがしい笑顔で「勉強になりました!」と言って下さった。
突然の特訓依頼ではあったが、やはり大会に際しては、勝負度胸や目算のタイミング、残り時間に応じた方針と割り切り方を思い出して欲しかったので、私としては本当に協力した甲斐があった。
検討は、お互いの時間が15分を切ったあたりの局面で打ち切った。うん、やっぱりミスは多くなるんだな。
Sdさんの、今週末の健闘を心から祈っている。是非とも、怖いものなしで突き進んでいただきたい。