第33期天元戦本戦2回戦 101-150手 2007年3月29日 日本棋院
白 七段 井山裕太
黒 九段 王 立誠(コミ6目半)
《出典:「囲碁」2008年1月p100》
《感想》
【黒101】これは、白28の下のほうが良いのでは?
【白102】
【黒103】黒85の右の断点補強。
【白104】黒の勢力を侵略する。
【黒105】勢力を広げる。
【白106】
【黒107】
【白108】どんどん押し付ける。
【黒109】延びた。
【白110】どんどん侵食。
【黒111】
【白112】
【黒113】捨石を利用して地を増やした。
【白114】
【黒115】これよりも、勢力を広げるには、黒17の上の方が良かった?否、このあとの進行を見ると、左辺中央の黒が断点が多く、ここを白に攻められて黒は苦しんだ。この黒の断点の原因は、黒95と中央へ延びたことにある。この手で白96の点に打っていれば、断点は左辺上部のみになって、白から責められることはなかった。全局を見ても、黒は下辺と上辺、左辺上部で中央を制している。黒95で中央を目指す必要は少なかった。地を守るべきだった。黒は脇が甘い。自分の弱みをきちんと補強してから勢力を拡大しなければならない。この教訓は、小生にも良く当てはまる。自分の地や勢力に欠陥があるのをよく見ずに、更なる地を獲得しようとしたり、自陣の勢力を広げたり相手の勢力を押さえようとしたりする。結果、自分の大きな石を取られてしまうことになる。
【白116】2目の頭をハネられた。白6も控えているこの部分で、こんなハネを食らっては黒は面白くなく、全く宜しくない。
【黒117】
【白118】
【黒119】
【白120】この手で黒の中央への進出を止めたが、一方、白の方も断点を2つ抱えてしまった。この断点を補強することが次の白122で必要ではなかったろうか。白、黒共に相手を攻めることに走り過ぎのような気がする?
【黒121】
【白122】この手は、黒の勢力圏に飛び込んで黒の2つの断点を覗く強烈な手。黒の弱みを突いた。しかし、黒の陣地内に飛び込んで、最後には右辺右の白群とつなげてしまったところは、凄い。
が、地合を見ると、白は上辺の約半分と左下隅と他は少々。だからこれ位の強烈な手を打たないと地合で負けてしまう。乱暴な手のようだが、止むを得なかった手でもあった?
しかし、最終的に白2目半の勝ちとなっているので、黒115の時点でも黒は結構地合でリードしていたのだろう。だから、黒115を打つときに、地合を計算して、欲張らずに現在の自陣を補強して確実に勝ちを目指す、という戦略を描くべきであった。中盤になると、其の時点での地合の推定を行うことが重要となるだろう?現時点での小生の実力ではとてもそのような推定は出来ないが。
【黒123】中央に延びている黒群との繋がりも意識した?(最後には繋がっている。)また、左辺上部の黒群は右上の黒群と容易に繋がりそうだ。(が、最終的には、左辺上部の黒群は、単独の生きを強いられて、やっと2眼で生きることになってしまった。白の善戦だろう。
また、この手で白122の右に付ける手はどうだろうか?これだけ黒で囲んでいるので、断点はあっても白の数子を切り取ることは出来るかもしれない。
【白124】
【黒125】
【白126】
【黒127】これで右下の黒群との繋がりが見えてきた。
【白128】いよいよ黒を切断した。切断されても、下の黒群は右下の黒群と繋がれば良いし、上の黒群は右上の黒群と繋がればよいので、ダメージはあまり無い。(実際には、右上の黒群とは繋がらなかったが。)
【黒129】
<現時点での局面推測と最終計算の比較>
注)最終局面での地の数を[ ]で表わす。
【黒】右上隅+右辺上部:2眼(18)[16]、右下隅+右下辺:2眼(24)[52]、左辺下:0眼(6)[0]、左辺上:0眼(?)[3] 《合計》48目[71目]
【白】右辺:2眼(13)[10]、左下隅:2眼(30)[30]、左上隅:2眼(15)[21],左上辺:2眼(7)[8]
《合計》64目[69目] :::中央の40目以上がまだ未定:::
※白の地:64-48+6.5=24.5目 [69-71+6.5=4.5目]
(注)実際には、白2目半の勝ち。第5譜から小生が計算した4.5目より2目白が少ないのは、あげはまの計算が正確ではなかったようだ。
《感想》
第2譜では、中央部が未定であったが、最終的に上部は黒、白が殆どを埋め尽くし、下部は黒が大きな地とした。黒が頑張った。白22で攻め込まれて分断されたが、上部は最小の2目で生き、下部は下辺の大石とつなげることが出来た。白は粘り強い碁を打った思う。
【白130】黒129とつなげたので、白もつなげる。白群は黒の包囲にあって大変苦しい。これで最後は生きたのだから凄い。
【黒131】まるでシチョウのように白群を締め付ける。
【白132】白はひたすら逃げる。行き先にある白8が唯一の救い。
【黒133】黒は大きく囲って白を閉じ込めた。これで白群は一巻の終わりかと思った。
【白134】白は、攻められる一方だったが、黒の断点を突く。攻められているときには、相手の石の段点を探しこのような反撃をしなければならない。ついつい自分の石の弱さだけに目が行ってしまいがちだ。
【黒135】白134など物ともしない、という手。白134は最終的に役に立ったのだろうか?
【白136】囲みの一方を食い破ろうと言う手。
【黒137】白の進出を防ぐ。しかし、黒も左辺上部の6子がまだ目もなくほかの黒群と繋がっていない。白は黒のこの弱さを利用して黒の囲いを突破しようと言う考えだろう?逃げる時には、相手の弱点を良く見て、逃げる時にそれを利用しなければならない。
【白138】黒の断点の一箇所を切った。2つの断点のどちらを切るかは、良く読まないといけない。難しい!
【黒139】黒は左辺上部の6子を守るために、白の突破を許さざるを得なかった。黒が6子を取られると、今まで追撃していた白群が完全に生きてしまう。
【白140】白は黒を攻めたお陰で堂々と突破できた。右辺の白群との接続を目標として逃げていくことになる。
【黒141】黒はまだ攻めを続行するためにこの1子を助けた。
【白142】いよいよ突破。
【黒143】白群が突破したので、断点をつなげた。これまで、ここを切られても攻め合いで白に勝つという判断だったようだ?
【白144】この手で、黒141の右に当てた方が楽に逃げられるような気がするが?斜めに飛ぶと、間に割り込まれて危険なような気がするが?実際には黒が割り込んでいないので、白には割り込まれても切られないという勝算があったのだろう? 良く見ると今まで白群を追いかけていた黒群も根無し草で弱い。白を切断しようとすると、この根無し草の黒が危うくなるかもしれない。黒と白両方の根無し草の群が微妙な駆け引きを行っている。
【黒145】下の大石と左辺の黒群とを接続し、黒は一服した。
【白146】白138で切断した左辺上部の黒群を攻め取ろうと言う手。また、白133,141の2子も捕獲できる。
【黒147】黒は133,141の2子を諦め、その代わりに左隅の白陣へ新入し、左辺上部の黒群と右辺上部の黒群とをつなげようと図った。
【白148】この黒の思惑を断ち切る手。
【黒149】
【白150】黒の断点を切断する。ここいらの戦いは複雑怪奇。余程読まないと失敗してしまう。小生のレベルではこんな複雑な碁を打つことは不可能。
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