女流プロVSアマ精鋭打ち込み12番勝負
出典:「囲碁」2008年1月 p10 1-100
白 奥田あや
黒 花巻未生(先)
【黒18】変わった手。解説によると、これは手筋だと言う。が、その後の展開を見ても、白18は何の役にも立っていない。捨石と言うことだろうか?
【白24】白は、根拠が欲しいので、この手しかない。下辺の黒が根拠を奪われ困った。が、下辺中央にまだ発展の余地があり、大丈夫だろう。
【黒25】黒15の左にもう一手伸ばしてから黒25の方が良くはなかったろうか? あるいは、R2の位置に根拠を確保する手はどうだろうか?黒13、黒15の2子は、場合によっては捨石とする。3つの群を全部生かそうとすると無理が生じる。黒は2子を捨てることで、右辺に地を構築する、という戦術はどうだろうか?
【白42】この形で、黒は右辺の3子が全く働かない。その代わりに、中央の黒群がささやかに生きることになった。白が働いている形に見える。
【黒49】直ぐ上に白の強力な壁があるので、足を伸ばし過ぎ。これ程伸ばさなくとも、隅に一眼は見込まれるし2眼は出来ただろう。白の強い所では、石をつなげて打たなくてはならないだろう。事実、この後、黒49の右に白から割り込まれ苦戦した。
【白50】この一手で左下隅と繋がって、白10から伸びた白群は安心した。
【黒51】大場より急場、このままでは右下中央部の黒群が攻められる。左辺の黒2子とつなげるような手を打たなくてはならないだろう。黒45の左一間飛びの所か?あるいは、黒41の上か?
【黒57】左辺上部での応答が終わって、やっとこの手が出た。
【白58】黒の左右の繋がりが、まだ後一手は掛かるので、伸びきった黒をせめて黒の地を掠め取り尚且つ自陣の地を強固に確定しようとした。
【黒59】白から攻め取られても、本体は安定だと考えて、白58の攻めに手を抜き、左辺黒2子の補強を兼ねて大場を打った。
【白60】白も流石に大場へ向かった。
【黒61】これで中央右下の黒群が一息ついた。そして、中央に地を作ろうと言う気配である。
【白62】中央はほおって置いて、せっせと地を掠め取ろうと言う手。この手は右下隅の黒を攻めるのだが、小さくて、上辺の中央部のほうが大きかったのではないか?
【黒63】黒は、下辺の白の攻めをしつこく続ける。
【白64】黒63に対応して隅を守った。
【黒65】黒はこの手で左右のつなぎと、左辺の大きな勢力を作った。しかし、終局を見ると、白は左右のつなぎを切断している。2間2間の繋がりは十分ではないことが分った。黒としては、下辺の白群を圧迫しながらこの繋がりを補強しなければならない。が、実戦では、左下隅と更に下辺左に黒が攻め込み、其の余波で白が下辺第2層に厚みを作った。
【白66】中央部が黒っぽくなったので、消しに行った。が、消すだけで、上辺中央部に白いしがないので、自陣の強化には、足りない。もっと先に上辺中央部へ白石を置くべきだった。白62は、下辺の細々した攻めではなく、上辺中央部に打つべきだったろう?
【黒67】
【白68】
【黒70】自陣の強化と黒への攻めとを兼ねた。
【白72】やっとここへ石が行った。
【白78】白の断点を補強した。この手は必要。がもう一つ、白66の右の断点が気になる。この断点を補強するために、早めに白72の一間下に白石を置きたい。実際、終盤になってこの断点が覗かれて、黒が白の陣地へ侵入している。断点の多い囲いは極力避けたい。自分では囲って地を作ったつもりが相手から侵入されたらガッカリしてしまう。白78は、むしろ白68の上の断点を補強するべきだったか?
++++地合いの計算++++ [ ]内は、最終地
【黒】右上隅:15[16]、右下隅:16[10]、左辺中央:56[25]、左下隅:0[12]、中央下部:[4]
【白】右辺中央:35[39]、下辺+左下隅:27[2]、左上隅+上辺中央:50[24]
合計:【黒】15+16+56+0=87 [16+10+25+12+4=67]
【白】35+27+50=112 [39+2+24=65]
黒3目勝ち
※小生の計算では2目勝ちとなった。1目の差はあげはまを加算していないため。
+++++++++++++++++++
【黒79】この点は白が先に打ちたかった。
【白80】欲張れば一路上ではどうだったろうか?
【黒81】白の地を脅かす。
【白82】右下隅の黒をのじを脅かす。しかし、この手で3Cへ打って左下隅を守った方が大きかったのではないか。最終的に、左下隅はそっくり黒に侵入されてしまった。白82の右に打たれても墨の黒は生きることが出来たのではなかろうか?
【黒83】守り。
【白84】黒の左辺の地を減らす手。ここに黒から打たれると、中央まで延びる大きな地となってしまう。左下隅を守る手と比べて、こちらの方が大きいだろうか?確かに、この手を打たないと盤面中央左半分はすべて黒の地になっていた。
【黒85】黒は白64が2線に低いので、自陣を守るためと、左上隅の白が薄いので攻める手がかりにする目的。この手でどんな攻め手が生じるか小生には見えないが、次に白が守ったので、矢張り白が手抜きできない攻め手があったのだろう。
【白86】この手で黒85の一路上の方が左上隅を守るには良いだろうが、白880との間に3間も間が空いているので、こちらを守ろうと意識したのだろう?しかし、後知恵だが、黒85の一路上が空いていた結果、白の防衛線が上辺3線に後退して数目の地が減ってしまった。
【黒87】自陣を守ると同時に左上隅の白の薄さを見て攻め込む足掛かりにした。
【白88】白は、左上隅の黒の侵入を放置して、中央の黒地への侵入を優先した。確かに、ここに黒から打たれると黒字が大きく確定してしまう。
【黒89】この手で白を切る手があったであろう。黒は中央部に厚みがある。が、黒の2子のダメが詰まっていて、白89と並ばれると、黒75,77が取られるためここに補強しなければならない。が、切られた白2子は、黒57,65の間をすり抜けて下辺の白群とつなげることが出来るだろうか? かなり難しいように思うが?実戦でも、白はつなげることが出来なかった。
【白90】周りに黒が多いここで2段ハネとはかなり勇敢な手だと思う。
【黒91】黒も断点が多いので、ここは伸びるに如かず。
【白92】白は嵩に掛かって黒陣の中を勇敢に追いかける。
【黒93】この手は必須だろうが、其の前に、白88の右横か下の断点を切って白を脅かした方が良かったかもしれない。黒が周りを囲っているので、切った1子にどちらから当てられても十分逃げられる。が、黒が当てた途端、黒75,77の2子に逆に当てられて、紛れるかもしれない?
【白94】しかし、白は十分に侵入した後断点を解消することが出来た。残った断点は白66の右だけとなった。
【黒95】白の断点を覗いたが、この手は白を補強するだけで、黒の補強にはなっていないし、また、黒の地は殆ど増えない。このような相手の弱点は後迄残しておき、コウの材料に使った方がよくは無いだろうか?
【白96】ここは黒が強い所なので無条件に接がざるを得ない。
【黒97】ここは隅を取る大きな手。白は中央左の侵入を優先したので、勿論覚悟していた。このように、囲碁は基本的に相手の地を責めることを優先する争いと言えるだろう。守るよりも攻めるほうが気持ちが良い、と言うことになる。
【白98】黒の断点を覗く。この断点を切られると右中央の黒群は確定1眼のみとなってしまう。が、切られたら、黒45の1路上に打って、白30の下と黒95の下を見合いとしてもう一眼で切るので、後手ながら2眼で切そうなので、ここは切らせて左下隅の地を守った方が大きかったかも知れない?
【黒99】つなぐ。
【白100】白はここを以前から気にして地を取ってきたが、左下隅を守る方が大きかっただろう。
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