(5)一手ヨセ二段コウに迫る
前回
http://goxi.jp/diary/200174 は、絶対計算を用いたヨセコウの考え方について整理しました。ポイントは「一手ヨセコウの1手の価値は、本コウの2/3」でした。
今回はいよいよ、最初に掲げたテーマ図において「☆のサガリが隅に利いているのか」を考えていきます。このシリーズのメインテーマになりますので、図がたくさん登場します。混乱しないようにご注意ください。私も注意します(笑)。
【テーマ図】
┌┬┬┬┬┬┬
├┼┼●●○┼
├●●●○┼○
├●○○○┼┼
☆○○┼┼┼┼
1)黒から打った場合
黒地が6目とみなせます。
┌★┬┬┬┬┬
├┼┼●●○┼
├●●●○┼○
★●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼
★のどちらに打っても計算上は同じです。
2)白から打った場合
五┬参┬┬┬┬
弐壱┼●●○┼
├●●●○┼○
四●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼
○┬○┬┬┬┬
●○┼●●○┼
├●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼
上の図まで進みます。一見して二段コウの形ですが、実は白が勝つために右からハネを打ち、さらに二段コウを争う必要のある、「一手ヨセ二段コウ」の形になっています。
○┬○┬┬┬┬
├○┼●●○┼
☆●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼
コウを取り……
○┬○┬☆┬┬
├○┼●●○┼
○●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼
さらにハネて、ようやく普通の二段コウ。
○┬○┬○┬┬
☆○┼●●○┼
○●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼
このコウをツグことができれば白の勝ちです。
ではまず、一手ヨセ二段コウの局面がどのように推移するかを見ていきましょう。
[a]
┌●○┬┬┬┬
●┼★●●○┼
├●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼ アゲハマ ●0○2
[b]
┌●○┬┬┬┬
●○┼●●○┼
├●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼ アゲハマ ●0○1
[c](開始局面)
○┬○┬┬┬┬
●○┼●●○┼
├●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼ アゲハマ ●0○0
[d]
○┬○┬┬┬┬
├○┼●●○┼
○●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼ アゲハマ ●1○0
[e]
○┬○┬☆┬┬
├○┼●●○┼
○●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼ アゲハマ ●1○0
[c]がスタート地点です。[a]は黒地8目ですね。では[e]は何目になるでしょうか。ここでも前回と同じように、ヨセコウを「解消」して発生する通常の二段コウの大きさと1手の価値を基にして考えていきます。
[f]
┌●○┬○┬┬
●┼★●●○┼
├●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼ アゲハマ ●1○3
[g]
┌●○┬○┬┬
●○┼●●○┼
├●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼ アゲハマ ●1○2
[h]
○┬○┬○┬┬
●○┼●●○┼
├●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼ アゲハマ ●1○1
[i](=[e])
○┬○┬○┬┬
├○┼●●○┼
○●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼ アゲハマ ●1○0
[j]
○┬○┬○┬┬
☆○┼●●○┼
○●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼ アゲハマ ●1○0
[f]は黒地7目、[j]は白地19目です。二段コウは4手セットですので、終点間の目数差である26目を4で割って「1手の価値」を6+1/2目と計算することができます。
したがって、[g]は黒地1/2目、[h]は白地6目、[i]は白地12+1/2目と計算できます。
ここで[e]と[i]が同じ図であることに着目すると、[a]~[e]の一手ヨセ二段コウは「黒地8目」と「白地12+1/2目」の間を4手セットで移行していると考えることができます。
したがって、この1手ヨセ二段コウの一手の価値は、全体の目数差である20+1/2目を4で割って、5+1/8目と計算することできます。またこのことから、[b]は黒地2+7/8目、[c]は白地2+1/4目、[d]は白地7+3/8目と計算することができます。
(※外からハネを打ったためにずれが生じましたが、模式的に一手ヨセ二段コウの1手の価値は、二段コウの3/4になります。)
◎この局面は「白地2+1/4目」!
○┬○┬┬┬┬
●○┼●●○┼
├●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼ アゲハマ ●0○0
これで、【テーマ図】の局面は、
・黒が先着すると黒地6目
・白が先着すると白地2+1/4目
であることが分かりました。
そしてさらに考えを進めますと、黒が着手した図と白が着手した図の目数差は8+1/4目ですからこれを2で割れば、テーマ図に先着する「1手の価値」は4+1/8目であることが分かります。またテーマ図の局面は黒地1+7/8目と計算することができます。
◎テーマ図における1手の価値は「4+1/8目」!
┌┬┬┬┬┬┬
├┼┼●●○┼
├●●●○┼○
├●○○○┼┼
☆○○┼┼┼┼
お疲れさまでした。ついにここまで来ましたよ(^_^;;)もうすぐゴールです。
最初の問いに戻ります。
「☆のサガリは隅に利いているのか」
「【テーマ図】で、黒は手を抜けるか」
ここでの1手の価値は「4+1/8目」です。すなわち、後手ヨセ8+1/4目と同等です。
後手ヨセ8+1/4目とは、
┌○●┬┬┬┬
├○●┼┼┼┼
├★●●●●●
●○○┼○┼○
●●○┼○┼○
├●●●┼┼○
上図で★に遮る(または白がツグ)手に相当します。
すなわち単純に比較すれば、「★に打つべき局面なら少なくともテーマ図で黒は受けるべきである。」と結論づけることができます。また、具体的に逆の言い方をするなら、「序中盤ではほとんど受けるべきではない(利かない)。」と考えて差し支えないことになります。
いかがでしたでしょうか。1手の価値とヨセコウ、二段コウの特性を解きほぐしていくことで、当初の疑問に対して一定の結論を得ることができました。
なお、テーマ図の解明が一段落したので本題は今回でおしまいになりますが、あと1,2回ほど、以下のテーマについていずれ補足をさせて頂こうと思っています。
・実戦における計算法の活用
・「ヨセ・絶対計算」でヨセコウが扱われなかった理由
それでは、長らくのお付き合いありがとうございました。ご感想をいただければ幸いに存じます。m(_ _)m
コメント
09月12日
00:07
1: 利根川の杭
実戦では多くの場合添付図のようになるでしょうね。
これは仕掛けた方が不利になる二段コウ、セキにすることもできる。
これも万年コウの一種でしょうね。このままで終局すればセキ扱いになるのかなあ?
(;GM[1]FF[1]SZ[19]NE[W]SS[@@]AP[StoneLeaf2]AB[bc][bd][cc][db][dc][eb]AW[ae][be][cd][ce][dd][ec][ed][fb][gc];W[bb];B[ab];W[ca];B[ad];W[ea];B[da];W[fa]ID[1])
09月12日
01:27
2: やたぞう
>利根川の杭さん
添付の局面は、どちらからもセキにすることができますね。このままで終局する必要はないように思います。
万年コウは、すでにコウになっている状態で、本コウを仕掛ける側が不利になる一種のヨセコウなので、この局面は少し違うものだと思います。
白はホウリコミを打てば二段コウですね。これはヨセコウではない普通の二段コウです。
┌┬○●○○┬
●○┼●●○┼
├●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼ アゲハマ ●0○0
本文の説明にそって計算しますと、白がホウリコミを打った瞬間は「白地6目」で[h]と同じ大きさになります。黒が放り込みを打った瞬間は「黒地1/2目」なので、上図の局面は「白地2+3/4目」となります。そうすると白が本文より得をしてしまっています。おかしいですね?
したがって、ご提示の図では5のハネに黒は6とオサエず、手を抜くのが正しいと思われます。
絶対計算ではある局面における着手の可能性を五分と見るので、放り込んだ瞬間の取り番は考慮しません。そのため直感的・実戦的な結果とずれが出ることがありますね。
09月12日
16:23
3: やたぞう
上のコメントは「したがって、~」の段落がおかしいですね(-_-;)すみません、急いでお返事すべきだと思い、夜中に慌ててしまいました。また改めてお返事させてください。