続きまして、囲碁の創作小噺でございます。
『 碁 笥 』
ご亭主に先立たれた女性を、後家(ごけ)さんと世間では言いますですな。後家になった女性のお宅にちょくちょく顔なんぞ出しておりますと、ご近所から、後家に手を出すなんてとんでもねぇ太てぇ野郎だと、陰口が聞こえて参ります。
女性の方はってぇーと、亭主が死んで、独り身になったもんですから、もう気楽で気楽で、毎日、遊んで暮らしております。東京駅八重洲口の日本棋院八重洲囲碁センターで、碁を憶えて、面白くて面白くて、毎日、お相手を探しておりますが、なかなか見付かりません。碁を打たれる女性はまだまだ少のう御座いますので、どうしても男性がお相手するということになります。
そうかと言って、碁の相手だけと言われて誘われた男性の方も、世間の目がうるさくて、そうは簡単に後家のお宅を訪問するわけには参りません。碁の相手を断りきれなくなった男性が、仕方なく、夜中に手ぬぐいで頬被りをして、そーっと、裏木戸から入って参ります。
奥の座敷で、さっそくお手合わせです。男性が碁笥(ごけ)に手を入れて、石を取ろうとすると、入れた手を何かにギュッと掴まれて、どうもがいても手が抜けません。碁笥の中から、「俺の女房に手を出そうなんて、この野郎~。」と声が聞こえてきます。恐ろしくなって、思わず「キャーッ」と叫んだ男性が、そのまま裏木戸から転がるように逃げ出し、外へ出た瞬間、ポロリと碁笥が手から抜け落ちたそうです。
なんとも恐ろしい話じゃありませんか。皆さん、そう思いませんかぁー?
コメント
06月25日
13:48
1: よいしょ(もみじて)sasamochi
囲碁の怪談、読ませていただきました。
囲碁を元にこのような話も作れてしまうのですね。
へえさんが作られたんですか?
このような怪談は読むのが初めてなので、新鮮な驚きがありました。
他にも、このような話があればぜひ読んでみたいです。
06月26日
06:05
2: どん吉
よいしょさん>
また、気が向きましたら、暇な時に囲碁の怪談の続きを考えてみます。僕の創作ですが、どこかで聞いたような話だろうと思います。もっと独創的な話を作らなければいけないと自戒しています。
06月27日
09:46
3: 春海
傑作です!
碁笥と後家が同音異議語であるのが、いい伏線ですね。
うかつにも、手を入れた碁笥とは後家さんの秘やかな部分のことかと思ってしまいました。(涙)
06月27日
11:03
4: どん吉
春海さん>
碁笥(後家)が手を掴んで離さないという、とんでもない語呂合わせの落ちですが、これには裏がありまして、春画の安田コレクションという珍本があります。無料で、カタログを送ってくれますので、取り寄せてご覧になるとよろしいかと存じます。
<安田コレクション>
http://www.rakuten.ne.jp/gold/shogeikan/goods/yasuda.html
春海さんも、都はるみと、同音異語ですね。
<都はるみ>http://miyakoharumi.net/
07月19日
00:56
5: 春海
カタログ取り寄せの手配をしました。買えそうもない値段ですね。
ところで私のHNは「はるみ」でなく「しゅんかい」です。覚えていただければ幸いです。ちょっと大それた名前ですが・・・。
07月19日
03:01
6: どん吉
春海さん>
全集を買わなくても、安田コレクションのカタログだけで楽しめます。まだ、お若い方かも知れませんが、充分、回春の役に立ちそうです。渋川春海という江戸時代の碁打ちがいたようですが、やはり、囲碁に因んだHNでしょうか?
07月19日
07:54
7: 春海
まさにその通りです。
彼は天文と暦の研究者でもあり、わたしはその方面も好きなのであやかりました。レベルは雲泥の差なので「大それた名前」なのです。