前回
http://goxi.jp/diary/197689 の続きです。
今回から2回にわたっては、「絶対計算」の基本的な考え方をダイジェストで説明することを試みます。メイエンさんの説明を理解されている方は、読む必要がありません。
(2)絶対計算ダイジェスト
絶対計算を理解するには、王メイエン九段の著書を読むのが確実かつ正当な方法です。氏の著作は非常に画期的な内容を提示しています。そして同時に、「絶対計算」の考え方を我々読者に理解させるためだけに数十ページを割いているという、実に「親切(心折)な」本でもあります。私もかつて目を回しながら読みました(笑)。
そんな「絶対計算」をこの日記でより簡潔に説明するのはなかなか困難です。ここでは最低限の解説と図示をもって「絶対計算」の説明を試みたいと思います。
・「絶対計算」とは、境界が画定していない局面において、黒白それぞれにどれだけの地があるかを計算する方法です。
・計算の過程で、ある局面において黒白のどちらが着手するかは、五分五分として考えます(コウの取り番は考慮しません)。
たとえば、Zという局面があり、黒、白どちらかが着手することで境界が決定する状況であったとします。そして、
・黒が着手したとき、黒地m目
・白が着手したとき、白地n目
であるとします。
このとき、Zという局面は「黒地(m-n)/2目(または白地(n-m)/2目)」と計算します。
そして、この局面で先着する価値(1手の価値)は、「(m+n)/2目」と計算します。
考え方の流れを模式図で整理してみましょう。
1. 黒白、おのおのから1手ずつの着手で地の大きさが決定する局面Zがあったとします。
黒地m目 ← 局面Z → 白地n目
___黒が着手__白が着手__
2. 「黒地m目」と「白地n目」の中間点を考えます。
黒地m目 - 中間点 - 白地n目
3. 中間点の地の大きさは、「黒地m目」と「白地n目」の平均値になります。
白地n目は、黒から見て「黒地マイナスn目」とみなせるので、黒地で表現すれば
中間点の地の大きさは「黒地(m-n)/2目」になります。逆に考えれば「白地(n-m)/2目」です。
4. 局面Zから、黒白、
どちらから着手するかの可能性が五分五分であると考えれば、局面Zは「黒地m目」と「白地n目」の中間点に一致します。
5. したがって、局面Zは「黒地(m-n)/2目」または「白地(n-m)/2目」の状態であると考えることができます。
黒地m目 ← 局面Z → 白地n目
_____黒地(m-n)/2目____
このとき局面Zを「黒地(m-n)/2目と『みなす』」のではなく
、「黒地(m-n)/2目『である』」と言い切ってしまうのが絶対計算のポイントです。ここで「黒地○目とみなせるけど、出入りは……」と考え出してしまうと間違いの元になります。あくまである局面を「○目の地である」と決めるのが絶対計算の大切な考え方です。
そして着手の価値(1手の価値)は、その1手が「○目の地」から「△目の地」へと変化させることを踏まえ、
局面間の地の目数差(△-○目)をもって「1手の価値」とします。この場合は、m - (m-n)/2 = (m+n)/2目が、着手の価値(1手の価値)です。
さて通常の後手ヨセは、上記のように2手の着手を1つのセットとして考えます。しかし、コウの場合はこれを3手セットにして、二段コウなら4手セットにして考えるのです。
次回はこの「○手セット」の違いについて説明します。