7月4日の日記
http://goxi.jp/diary/197212
この話の続きです。下の【テーマ図】から派生した話について書いていくシリーズです。
【テーマ図】
┌┬┬┬┬┬┬
├┼┼●●○┼
├●●●○┼○
├●○○○┼┼
☆○○┼┼┼┼
1回の分量をなるべく減らしたいので何回かに分けて投稿していきます。週1回くらいで、一応10回程度で終わらすことを目標にしています。いわゆる隅の「鍵型」の話なので、タイトルには便宜上【鍵の~】でナンバリングします。
王メイエン九段の「絶対計算」で使われている用語や考え方をベースに記述しています。メイエンさんの著書をお読みになったことがあれば、本稿をよりスムーズに読み進められると思います。
章立ては未定ですが、内容は以下に関して順に書く予定です。
・テーマ図に生じる手とは
・絶対計算の概要
・特殊なコウの価値の考え方
・ヨセコウの基本的な「ヨセ方」
・二段コウと本コウ、どちらを選ぶか
・一手の価値は減っていくもの?
・著書「絶対計算」で触れなかった理由
・テーマ図のサガリは本当に利きなのか
では、よろしければどうぞお付き合いください。
(1)遠い話をしよう
「【テーマ図】で、黒は手を抜けるか」
よく目にする定石形に、左辺のサガリ(☆)が加わった形。ここに白からの手段が生じることは、割とよく知られています。
では実際、どのような手段が生じているのでしょう。
2の2のツケから行ってみよう。えい。
五┬参┬┬┬┬
弐壱┼●●○┼
├●●●○┼○
四●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼(手順は基本的に漢数字で書くことにします。)
上記の手順で黒が弐、四と受けるのは余儀なく、途中で手を抜くと白に連打されたときに無条件で死んだり、より黒が不利な形に持ち込まれたりしてしまいます。
○┬○┬┬┬┬
●○┼●●○┼
├●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼
ひとまずできあがり。この時点で、白は最初のサガリも含めて黒より2手多く打っていることに注意。
黒はここから2手連打すれば、生きを確定させることができます。
┌●○┬┬┬┬
●┼★●●○┼
├●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼
しかし白が勝つためには、黒が全く手を抜いたとしても
コウトリ、ハネ、コウツギと、さらに3手を要します。
○┬○┬○┬┬
☆○┼●●○┼
○●●●○┼○
●●○○○┼┼
○○○┼┼┼┼
このように、白は最初のサガリも含め、
黒より5手も余計に打たないと黒を取ることができません。仕掛けても、利益を得るまで「話が遠い」のです。
「なんだ、すぐに死なないのか」
実は、この単純な理解でほとんど正しいのです。「すぐに死なない」のだから、それ以上考えずに手を抜いたっていいはずです。
ですが、5手も掛かるとは言え、手を抜き続ければ最後は隅が丸ごと死んでしまいます。どの局面までなら手を抜いても構わないのかを判断しておかないと、黒は知らないうちに大損させられてしまうかもしれません。一方で、判断が必要なのは白も同じです。周りにもっと大きな手がある段階で手をかけ続ければやはり損をしてしまいます。
では、どうやって正しく判断をするのか。そのためには
局面ごとに着手の価値(1手の価値)を評価する必要があります。
次回からは「絶対計算」を用いた、着手の価値を算出する方法について考えます。