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にあったヨセの問題とその解法を紹介します。
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■問題
次の図で外側の黒石と白石は活きていると仮定する。
●○┬○
●○┼○
●○┼○
●A┼○
●B┼○
●○○○
問題1:白が守るならばAとBのどちらが得か?
問題2:黒が出るならばAとBのどちらが得か?
■解法
上の図の白と黒を反転した別の図も用意し、
上の図と合わせた局面でAとBのどちらが優れているかを確認する。
■問題1(どう守るべきか)の解答
●○┬○ ○●┬●
●○┼○ ○●┼●
●○┼○ ○●┼●
●◇┼○ ○┼┼●
●┼┼○ ○◆┼●
●○○○ ○●●●
この図で左の白(A)と右の黒(B)のどちらが優れているかを確認しよう。
(1) 黒先の場合
黒1 左で出
白2 右で出(次図)
●○┬○ ○●┬●
●○┼○ ○●┼●
●○┼○ ○●┼●
●○┼○ ○◇┼●
●◆┼○ ○●┼●
●○○○ ○●●●
黒3 右で受け
白4 左で受け(次図)
●○┬○ ○●┬●
●○┼○ ○●┼●
●○┼○ ○●┼●
●○┼○ ○○◆●
●●◇○ ○●┼●
●○○○ ○●●●
黒先の場合の結果は持碁で差はない。
上の黒3右で受けを左で出にして「荒らし合い」に持ち込んでも
結果は同じ。
黒3 左で出
白4 右で出
黒5 左で上に出
白6 右で上に出
黒7 左で上に出
白8 右でアテ(次図)
●○┬○ ○●┬●
●○┼○ ○●◇●
●○◆○ ○●◇●
●○◆○ ○○◇●
●●◆○ ○●┼●
●○○○ ○●●●
黒9 左でアテ
白10 左でツギ
黒11 右でツギ(次図)
●○◇○ ○●◆●
●○◆○ ○●○●
●○●○ ○●○●
●○●○ ○○○●
●●●○ ○●┼●
●○○○ ○●●●
やはり持碁です。
(2) 白先の場合
白1 右で出
黒2 右で守り
白3 左で守り(次図)
●○┬○ ○●┬●
●○┼○ ○●┼●
●○┼○ ○●┼●
●○┼○ ○◇◆●
●◇┼○ ○●┼●
●○○○ ○●●●
白先の場合の結果は白1目勝ち。
上の黒2右で守りで左の出として「荒らし合い」に持ち込むのは
以下のように損になってしまう。
白1 右で出
黒2 左で出(次図)
●○┬○ ○●┬●
●○┼○ ○●┼●
●○┼○ ○●┼●
●○┼○ ○◇┼●
●◆┼○ ○●┼●
●○○○ ○●●●
白3 右で出
黒4 左で出
白5 右で上に出
黒6 左で上に出
白7 右でアテ(次図)
●○┬○ ○●┬●
●○┼○ ○●◇●
●○┼○ ○●◇●
●○◆○ ○○◇●
●●◆○ ○●┼●
●○○○ ○●●●
黒8 右でツギ
白9 左で守る
●○┬○ ○●◆●
●○┼○ ○●○●
●○◇○ ○●○●
●○●○ ○○○●
●●●○ ○●┼●
●○○○ ○●●●
これだと白2目勝ちになってしまう。
黒石の方が最初にアタリになったときに、
白石にアタリできないのがつらい。
(3) 結論
次の図で白はAに守るのが正解である。
●○┬○
●○┼○
●○┼○
●A┼○
●B┼○
●○○○
■問題2(どう出るべきか)の解答
●○┬○ ○●┬●
●○┼○ ○●┼●
●○┼○ ○●┼●
●◆┼○ ○┼┼●
●┼┼○ ○◇┼●
●○○○ ○●●●
この図で左の黒(A)と右の白(B)のどちらが優れているかを確認しよう。
(1) 黒先の場合
黒1 左で出
白2 右でコスミ(次図)
●○┬○ ○●┬●
●○┼○ ○●┼●
●○┼○ ○●┼●
●●◆○ ○┼◇●
●┼┼○ ○◇┼●
●○○○ ○●●●
黒3 左で上に出
白4 右で上に出
黒3 左でアテ
白4 右でアテ
黒5 右でツギ
白6 左でツギ(次図)
●○◇○ ○●◆●
●○◆○ ○●◇●
●○◆○ ○●◇●
●●●○ ○┼○●
●┼┼○ ○○┼●
●○○○ ○●●●
荒らし合いの結果は持碁になります。
(2) 白先の場合
白1 左で守り
黒2 右で守り(次図)
●○┬○ ○●┬●
●○┼○ ○●┼●
●○┼○ ○●┼●
●●◇○ ○◆┼●
●┼┼○ ○◇┼●
●○○○ ○●●●
白3 右で出
黒4 右で受け
白5 左で受け(次図)
●○┬○ ○●┬●
●○┼○ ○●┼●
●○┼○ ○●┼●
●●○○ ○●◆●
●◇┼○ ○○◇●
●○○○ ○●●●
白先の結果は白1目勝ち。
上の黒2を左で眼つぶしとしても結果は同じ。
白1 左で守り
黒2 左で眼つぶし
白3 右でコスミ
黒4 右で受け(次図)
●○┬○ ○●┬●
●○┼○ ○●┼●
●○┼○ ○●◆●
●●○○ ○┼◇●
●◆┼○ ○○┼●
●○○○ ○●●●
やはり白1目勝ち。
(3) 結論
次の図で黒はBに出るのが正解である。
●○┬○
●○┼○
●○┼○
●A┼○
●B┼○
●○○○
■結論のまとめ
次の図で、白はAに守るのが正解で、黒はBに出るのが正解である。
●○┬○
●○┼○
●○┼○
●A┼○
●B┼○
●○○○
この図の場合には「敵の打ちたいところに打て」と
いう格言が成立しないところが面白いと思います。
■組み合わせゲーム理論
上で使った分析方法は次のように一般化されます。
ヨセに関して
「黒が図Aと図Bのどちらを目指した方が得か」
を調べるためには
「図Aと白と黒を反転した図Bを合わせた図で
黒と白のどちらが有利であるかを調べればよい。
黒が有利ならば黒は図Aを目指した方が得であり、
白が有利ならば黒は図Bを目指した方が得である。」
このような考え方は碁のヨセの分析を超えた
もっと一般的な組み合わせゲームの世界に一般化されています。
ヨセの問題図A、Bが与えられたとき、
A図と白黒反転したB図を合わせた図を「ヨセ問題の差」
と呼ぶことにしましょう。
ヨセ問題の差: A図-B図=A図+白黒反転したB図
この式によってヨセ問題の「引き算」が定義されます。
このように、白黒反転した図と合わせた図を考えることは、
組み合わせゲーム理論で「ゲームの差」の話に一般化されています。
囲碁のヨセと組み合わせゲーム理論は非常に相性が良いです。
組み合わせゲーム理論に関する
日本語による読み易い解説は見付からなかったのですが、
英語が読めるならば次のリンク先が読み易いと思います。
http://senseis.xmp.net/?CGTPath
囲碁のヨセの分析に組み合わせゲーム理論およびその考え方が
どのように役に立つかが解説されています。
王銘エン著『絶対計算』を読んだことがある人は
「囲碁に関する組み合わせゲーム理論」=「絶対計算の数学的理論」
だと考えておけば間違いないでしょう。
伝統的なヨセ理論にはない概念が多数登場し
(特に温度(temperature)とサーモグラフィー(thermography)が重要)、
相当に豊かな理論に育っています。
コメント
10月30日
10:35
1: まっちょん
なるほど…。
敵の打ちたい所に打て、が通用しないケースですか。
格言は時に依りけりってのは分かってましたが、「敵の~」は一番信頼していた格言なんで、これはまた面白いですね。