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「うーん。」

クリスタルの9路盤を凝視して、天乃屋さん。少し前傾でも背筋が伸びているせいか、ストレイトの黒髪が項を越えて深い青色のお召し物にたっぷりかかっている。ここは目黒の手打ち蕎麦、小菅。お蕎麦を頂く前に一局。

「私、碁が強くなりたいです。」

はい、与党総会屋のみなさんご唱和願います。

「異議なし！」。

だけど、僕はもうそろそろぼけて弱くならない方法を考えなくては。
待てよ。今の御発言は、、？

「じゃあ天乃屋さんが二人目の弟子だね。だけどセンターはどっちか。」

「いつの間にはずれさんに弟子入りしたの？それに二人しかいないのにセンターなんて。センターはどっちかさんでいいですけど。」

異議を認める。弟子入りの手続きは面倒だ。礼儀がどうとか聞くが、まずは理屈が合ってないといけない。内田百閒先生が＜＜ちんどん屋に弟子入り＞＞という文を目にしたとき大いに御立腹されたそうだ。「ちんの師匠とどんの師匠は別なんだからちんどん屋に弟子入りなんて有得ない。」というわけだ。たとえフィクションでも文には真実が無くてはならないとはこういうことだろう。

方法序説の序のそのまた一等最初に「理性は万人に等しく与えられている。自分がそれ（理性）に於いて他人より少なくしか与えられていないといって文句を言う人はいないからである。」というようなことが書かれていたと思う。しかし不肖はずれやまは、どうも他人より理性が足りない気がしてきました。

僕が生涯2度目の解雇の憂き目に会ったのが昨年末。目黒には1２年通ったんで今でもたまにこちらで飲む。そのことを以前シホさんに云ったら（チャットですが）、

「目黒が島なのねー。」

通っていたビルのアネックスが新築されて天乃屋さんの会社がそこに入ったのが今年初め。首にならなければ毎日お昼に碁が打てたのにな。クレア嬢もご紹介したかった。3人で碁が打てたら楽しかったろうに。そのビルの１２階に歯科医院があって、富士山を真正面に見ながら治療が受けられます。初診でX線写真とったとき、

「下の前歯、一本抜いたんですね。」

「え、そんな記憶はないですが。」

「多分、子供のときでしょう。」

「でも3本で左右対称じゃないですか。」

「。。。」

それだ。AKB４８のセンターだって怪しいぞ。碁と同じで相手の打ったところばかり見ていちゃだめ。全体を見る。センターといわれたって、端から端まで数えていってセンターを同定しなくてはいけない。AKB４８が偶数だったらセンターは人と人の間の空間になるんだぞ。異議ありだ。

「うーん。」

長考ですね。まあ僕みたいなアマ低段にお弟子さんがついたって教えることなんてわからないしねえ。

ん？

ちょっと待ったあ、紅鯨。弟子は三人だ。
9月末の嵐の夜、市ヶ谷で、

「初段になるまで面倒みてくださーい。」

と酸辣さんに言われたではないか。これでセンターが落ち着く。

でもね。

先生方は、

「天乃屋さんはすぐ強くなるね。」

とおっしゃっていた。天乃屋さんは強くなりたいというのが動機だから、すぐに卒業してしまう。

しょうがない、そのときは俺がそっち側にいくか。

おことわり；写真と記事は関係ありません。