はずれやまさんの日記

(Web全体に公開)

2019年
01月28日
00:25

まぐさ場


横光利一の小説『蠅』で、「蠅」がまず最初に登場した後に、将棋を三番指して負け通しの馭者が出てきます。

蠅は馬の背中に乗っかって馬の汗などをなめていたのだろうけれど、そのうち母親に連れられたガキンチョが馬を見にやってきてがなり立てるのだけれど、馬はどこ吹く風で「馬草」を食むというような場面に繋がります。

そのあと登場人物がいろいろでてくるけれども、この馬の人間世界に対する無関心というのが劇的な結末への伏線になっているように思えます。

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「馬草」は「秣」の音の源だろうけれど、囲碁で「秣場(まぐさば)」(どちらから打っても、あまり実質的にも勢力的にもたいしたことのないところ(日記末尾「囲碁用語」の「散地」からの定義)というのは、なぜそういうのでしょう。

秣場とは、江戸時代以前に出来ていた地域共同体で軍馬や家畜のえさを得るための入会地だったわけですが、以前から思っていたのは、

①秣場は耕作地としては水田や畑などより生産性が低いから秣場になっているのだから、価値が低いという意味で囲碁でも使われている。

ところが、あくまでネット上での私見だけれど、

②秣場は入会地なので私有財産権を要求出来ない。それで、碁でも自分の地には出来ないという意味で使われる。
https://blog.goo.ne.jp/aizomechou/e/8565cfd1b3d2b33304e6d...

H山は今でも①だと思っています。強い根拠はないが、囲碁でのまぐさばは価値は小さいけれどもゼロではないから。

なお、②のもとのブログの筆者は、秣場と草刈り場を少し混同しているように思えます。戦国時代が終わって軍馬の馬草のための秣場の需要が減るにつれ、飼料以外の例えば茅葺き用の草を刈る場所に転用されたりしていく内に秣場が草刈り場と混同されたり同義になってきたようです。でも、両者の意味の違いは明かで、現に囲碁で仮に「ここは草刈り場」などといったら、価値の低いところという意味はでてこないですよね。

参考ですが、日本囲碁連盟の「囲碁用語」では「散地」をまぐさばと同義とするいっぽう、まぐさばは見出し語としては取り上げていません。
https://www.ntkr.co.jp/igoyogo/yogo_393.html

「散地」というのはあまり聞かないですが。
ぃーね! (3) ゆかりか    横浜囲碁BOYS 

コメント

2019年
01月28日
08:16

素晴らしい見解と分析で同感です(゜▽゜*)

これが人生経験と知性を兼ね備えた大人の日記というもので誰に見習わせたいものです。

2019年
01月28日
23:56

翻訳をやっているとひとつの言葉でも裏付けを取るためにいろいろ調べます。
そんな一例です。

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