はずれやまさんの日記

(Web全体に公開)

2013年
02月25日
18:31

小菅で囲碁のオフ会


ブログ中心に切り替えようと思ってはいたんですが、goxiのメンバーが出てくる日記だけでもこちらにもコピーを載せることにいたします。2・22に書いたものです。中身はほとんど碁には関係ありませんが。
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昨日は碁仲間11人で、目黒の手打ちそば、小菅にお邪魔しました。小菅のご紹介はいずれいたします。一種のオフ会なので、自己紹介などをした後だか、仔熊さんは3人兄弟の長男、僕は末っ子、F森さんはお姉さんがお二人、などと云うたびに、成程とか意外ねとかいう呟きが出たり、他愛の無い謎々などもやって、和やかに酒と料理をいただいた楽しいひとときでした。

帰宅して眠りに就こうとすると、メールの通知音。参加してくれた方からだったが文字化けで読めない。その旨返事を書いて、携帯のディスプレイをオフにすると暗闇が戻った。そのうち盆槍と人魚姫の事が頭に浮かんで来た。6人姉妹の末っ子ですね。

末っ子というのは兄姉がいるせいで、少しおませに育つ。囲碁界でも兄姉の影響で早めに碁を始めるから、成功例が多いのでは。人魚姫は姉たちが語る人間界のことをずっと聞かされて育ったわけで、それだけ憧れが強く、最初に見た王子様に一目惚れしたんですね。

僕が「人魚姫」を読んだのは小学校低学年の頃だろう。見開きの挿絵には「乙女の誰もがうらやむような」白い二本の足を美しい声と交換に手に入れた人魚姫が、裸で目を閉じて横たわっていた。長い髪が胸の辺りを覆っていた。文章には「人魚姫は長い髪で体を覆いました。」などと書いてあったと思う。黒光りする板の間の筵の上で寝転って読みながら、感情の高まりを覚えたことを記憶している。どの季節だったかは覚えていないが、今頃の季節なら、おじいちゃんが担当の薪ストーブと味噌樽が仕舞ってある納戸との間辺りで顔を火照らせていたんだろう。地元に一つしかない映画館が毎月一回新聞に折り込む月刊プログラムのチラシの単色刷りの小さいスチル写真にも興奮していた位だから、シンプルな劣情だったのかも識れない。

しかしどうだろう。この童話は三人称(絶対者が話者)のスタイルで語られる。例外は後半の一部で人魚姫のモノローグのようなところが出てくる。王子が語る、「あなた(人魚姫)によく似た命の恩人」こそが自分だとわかってくれない焦燥の部分だ。

魔法の薬を飲むまでの語りは話者だが、思考の主体はずっと人魚姫に寄り添っている。ところがさっきの変身のシーンにおいては人魚姫は意識を失っており、王子と話者とともに、読者はこの裸の人魚姫を眺めているのである。

十五歳の海上・人間界デビュー初日に王子を救護し、王子を忘れられなくなった人魚姫は、仕方無く海底の庭の、王子によく似た大理石の像を抱きしめて、その重みを感じ、波間で胸に抱いたときの王子を思い出すのでした。海難に遭って意識の無い王子を海岸まで曳航し、別れる迄に額に繰り返しキスをした事とともに、王子の頭の重みを思い出していたのだろう。そんな焦がれるような人魚姫の気持ちをわかっているわれわれは、人魚姫が自らの絶望を拒否する唯一つの選択として、命をかけた覚悟で薬を飲んで意識を失い、裸で王子の前に横たわっているのを今見ている。感慨は、読者の性別を超えている。



・・・・と最初書いたんだけど、どうだろう。ちょっと追い込みが足りない。

「人魚姫」は、何度も失恋を重ね、独身(未婚)のまま世を去ったアンデルセンが残した純愛(片思い)の童話、あるいは己の出自でもあった貧困層の、死でしかやすらぎが得られなかった境遇への共感が反映されている。また、ロマン主義のテーマである永遠の命が描かれている。などというのが普通の解説なんだろう。

でも女性が恋する男の前で裸になって意識を失っているんですよ。少年だった僕は、作者の意図がどうであろうと、エロティシズムを感じたのではないか。平成の助平男がそう思うのはどうぞご自由にと言われるかもしれない。しかし、横たわる肉体がどこにでもある(実際は至高の美しさなのだが、ここではそれは関係ない)肉体ではなく、その肉体の持ち主がどれ程強い命がけの決意を持って今の状態に至ったかを知っているからこその感慨であり、そこからエロティシズムを感じ取ったのではないか。写実性を要求し人格否定をともなうポルノグラフィーとは異なる。

男の読者が人魚姫に感情移入してからこの場面を読むのと、女性が読んだ場合の違いにも興味があります。

後半では、刃物と血が出てきます。繊細な足を受け入れた人魚姫は歩くたびに刃先を踏むような痛みを感じ、実際に出血しています。痛み故の優雅な足取りが人々に賛美されたのは皮肉です。また、鋭いナイフを姉から渡され、それを王子の心臓に突き刺し、湧き出た血潮が足にかかればそれが尾ヒレにもどるといわれる場面もあります。



「人魚姫」は大人も楽しめるファンタジーですね。

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「人魚姫」の翻訳はだいぶはしょったり英語訳と比べた限りでは内容が改変されているのもあるようです。日本語翻訳は著作権がまだあって、ここには載せられないようです。こちらは英語訳です。

http://www.gutenberg.org/files/17860/17860-h/17860-h.htm#...
ぃーね! (11) シホ  ひろみ  政光goxi管理人  たけだ  氷室 

コメント

2013年
02月25日
19:52

人魚姫はタイトルくらいは知っていましたが中身の方は知りませんでした。読んだことはあっても忘れているか、読んだのがお子様向けの端折ったものだったのか、いずれにしても遠い忘却の彼方の出来事です。

「後半では、刃物と血が出てきます。繊細な足を受け入れた人魚姫は歩くたびに刃先を踏むような痛みを感じ、実際に出血しています。痛み故の優雅な足取りが人々に賛美されたのは皮肉です。」
此処の所、ちょっと中国の纏足の風習を思い出しました。現代の颯爽と大股で歩く女性もいいものですが、か弱い女性の姿に優美を感じるのはやはり男性に特有の美意識かもしれませんね。

2013年
02月25日
22:38

お子様向けのは端折ったのがほとんどですが、なかには、王子を助けて渚まで運んだあと、人が来るまで冷えないように体で温めていたなどと脚色したのもあります。それはそれでまたエロくていいんですが。

男が、また女が、何にエロティシズムを感じるかって面白いと思います。纏足というのも、わかるような気はします。

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